去勢術後の合併症は、様々な程度のものが報告されています。なかでも気を付けなければいけないのが感染で、腹膜におよぶと予後は良くありません。
そこで、急性期の炎症反応をモニタリングするため、急性相に盛んに作られるタンパク質である血清アミロイドA(SAA)や、その他の指標を用いてモニタリングできるか検証した文献があります。
結果としては、去勢術後の術創感染などの炎症が続く症例では、白血球数や発熱よりもSAAや鉄との相関が示されています。
研究を実施した理由
術後の過剰な炎症や感染による合併症を早期に認識することは、早期に治療を開始し、術後の不調を減らし、復帰が可能になる。SAAは感度の高い炎症のマーカーであるため、手術した患者でSAAやその他の急性相反応物を測定することは、術後の炎症を臨床的に評価するのに役立つ。
目的
去勢術後の炎症マーカーの変化を調査すること、去勢術後の炎症の臨床的重症度と急性相反応物のレベルとの相関を評価すること。
方法
術後の炎症が軽度で合併症なく回復したグループ1(11頭)と、中程度から重度の局所的な臨床症状を認めたグループ2(7頭)を対象とした。2群の術前、術後3および8日の白血球数、鉄、SAA、フィブリノーゲンの血中濃度を明らかにした。
結果
術後3日で、両群ともに血清SAAは上昇した。グループ1では術後8日で術前のレベルに戻った。一方でグループ2では術後8日でも濃度は高いままであった。血清フィブリノーゲンの濃度は両群で同様に高く、調査期間で維持された。血清鉄はグループ1では去勢による変化はなかったが、グループ2では術後8日で術前のレベルより下がった。白血球数は術後期間で両群ともに変化はなかった。
結論
血清中のSAAと鉄は、炎症の過程を反映していて、その濃度は炎症の臨床的重症度と関連があった。対照的に、通常炎症や感染の指標と考えられている発熱や白血球数の変化は、術後の回復をモニタリングするのに有用ではなかった。
潜在的関連性
SAAと鉄の濃度をモニタリングすることは、術後のモニタリングを改善できる可能性がある。術創の感染により炎症が続いているとき、SAAや鉄の測定を行うことで、感染を早期に発見し、治療を開始することができる。