育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

橈骨遠位尾側の骨軟骨腫の特徴と治療成績22頭(Wrightら EVJ2012年)

橈骨掌側(尾側)の骨軟骨腫とは

橈骨掌側に形成される骨軟骨腫は、成長板付近の骨軟骨を原因とする外骨症や良性腫瘍と呼ばれることもありますが、明確な定義はありません。

骨軟骨腫の形状は様々で、トゲ状のものからドーム状のものまでさまざまです。これが前腕尾側を走行する屈筋腱に当たって擦れることが障害の原因となります。

腱鞘内で擦れて炎症が起きた場合は出血と腱鞘液の増加を呈し、手根管症候群の原因となります。腱鞘の腫脹、様々な程度の跛行、患肢の屈曲痛を呈すことがあります。

 

文献でわかったこと 

22頭の症例のうち、19頭はサラブレッド種であった。

若いサラブレッド競走馬においても一般的にみられる疾患であった。

骨軟骨腫は、ほとんどが橈骨の中央1/3に形成され、腱鞘内に突出して深屈腱に衝突することで傷害の原因となっていた。

腱鞘鏡下で、骨軟骨腫を除去し、損傷した屈腱をデブリードすることで、全頭が運動復帰し再発がなかったことから、良好な予後が得られると考えられる。

若いサラブレッド競走馬においても骨軟骨腫は発生し、これが手根管腱鞘炎の重要な原因のひとつとなっている。 

   

参考文献 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

研究を実施した理由

 臨床的には良く知られているにもかかわらず、橈骨遠位尾側の骨軟骨腫についての報告はこれまで数が少なく、若いサラブレッド競走馬での発生はこれまでに報告がない。また、成書では深屈腱の損傷の詳細やその治療については注目されていない。

仮説

 若いサラブレッド競走馬において、橈骨遠位尾側の骨軟骨腫はよく発生する。その大きさや矢状方向・近遠方向の部位は様々であるが、そのほとんどは深屈腱への衝突による損傷をおこす。

方法

 橈骨遠位尾側の骨軟骨腫と診断した馬の診断画像と医療記録を回顧的に調査し、追跡調査の情報も得た。

結果

 22頭の馬で25の骨軟骨腫が認められた。このうち19頭はサラブレッド種であった。全ての骨軟骨腫は骨幹端部に位置していた。22の骨軟骨腫は骨の中央1/3に位置し、接する深屈腱の潰瘍が21肢で認められた。治療は、全ての馬で骨軟骨腫の除去と、損傷があれば深屈腱のデブリードを行った。全ての馬は運動復帰し、再発は認められなかった。

結論

 若いサラブレッド競走馬において、橈骨遠位尾側の骨軟骨腫は発生する。しかし、他の馬でもこれは認められる。骨幹端部に形成されることは共通していて、ほとんどは橈骨の中央1/3に位置する。大きさにばらつきはあるが、ほとんどで接する深屈腱には潰瘍が形成される。腫瘤を除去し、損傷した腱をデブリードすることで、良好な予後が得られる。

潜在的関連性

 若いサラブレッド競走馬において、橈骨遠位尾側の骨軟骨腫は手根管腱鞘炎の重要な原因のひとつである。ほとんどが橈骨の中央1/3に形成され、深屈腱への衝突による損傷を起こしやすい。腱鞘鏡手術により、良好な予後が得られる。