橈骨掌側(尾側)の骨軟骨腫とは
橈骨掌側に形成される骨軟骨腫は、成長板付近の骨軟骨を原因とする外骨症や良性腫瘍と呼ばれることもありますが、明確な定義はありません。
骨軟骨腫の形状は様々で、トゲ状のものからドーム状のものまでさまざまです。これが前腕尾側を走行する屈筋腱に当たって擦れることが障害の原因となります。
腱鞘内で擦れて炎症が起きた場合は出血と腱鞘液の増加を呈し、手根管症候群の原因となります。腱鞘の腫脹、様々な程度の跛行、患肢の屈曲痛を呈すことがあります。
文献でわかったこと
橈骨遠位の骨軟骨症は、成長板よりも近位の骨幹端で、中央1/3に発生することが多い。しかし、橈骨遠位の外骨症は、閉鎖した成長板の領域に発生していた。また、X線および組織学的にも骨軟骨腫と外骨症は異なる。
しかしながら、臨床症状は似通っており、手根管腱鞘液の増量と間欠的で軽度~中程度の跛行を伴っていた。骨軟骨腫と同様に、手術により衝突する塊を除去することで、全頭が運動復帰し、再発は12ヵ月後の1頭のみと予後は良好であった。
参考文献
目的
橈骨遠位の成長板閉鎖部から尾側面に発生する外骨症を原因とする手根管腱鞘炎の臨床、X線、超音波および関節鏡所見を明らかにし、外骨症の外科的切除の結果を明らかにすること。
デザイン
回顧的研究
動物
10頭の馬
方法
1999-2003年の期間に手根管腱鞘の腱鞘液増量と跛行を認めた馬の医療記録を調査した。
結果
すべての症例において、片側肢の間欠的で軽度から中程度の手根管腱鞘の腫脹と跛行の病歴があった。神経周囲麻酔および腱鞘内麻酔の結果、手根管腱鞘を原因とする跛行と特定された。X線検査により、橈骨遠位の閉鎖した骨端領域の尾側皮質骨を起源とする外骨症が明らかとなった。腱鞘鏡を行い、手根管腱鞘を突き破り深屈腱に衝突する外骨症を確認し除去した。全ての馬は元の運動に復帰した。1頭は手術から12か月後に症状が再発したが、内科治療により解消した。
結論と臨床的関連性
橈骨尾側の外骨症が手根管腱鞘の膜および内部構造物に衝突することで腱鞘の腫脹と跛行がおきる。臨床症状や外科的な治療法は骨軟骨腫と似ているが、外骨症は橈骨遠位の閉鎖した成長板の領域に発生し、骨軟骨腫とはX線画像および組織学的には似ていない。