神経ブロックや滑液嚢内麻酔は、皮下や滑液嚢に局所麻酔薬を投与する方法です。
これにより疼痛部位が判明したら、次に画像診断を行い、どこにどのような所見があるか診断します。しかし、投与する薬剤やガスが診断に影響を与える可能性は考慮されています。
文献でわかったこと
MR画像診断に対する下肢部局所麻酔薬の影響は、掌側指神経、ナビキュラー滑液嚢、遠位指節間関節内麻酔では影響は見られなかった。しかし指屈腱鞘内麻酔のみ明らかな滑液増量という影響がみられたため、投与後3日以降にMRI検査で評価することが推奨された。
引用文献
B Black, N C Cribb, S G Nykamp, J J Thomason, D R Trout
Equine Vet J. 2013 May;45(3):320-5. doi: 10.1111/j.2042-3306.2012.00649.x. Epub 2012 Sep 26.
“要約
研究を実施した理由
局所麻酔薬によって生じるアーティファクトは、超音波およびシンチグラフィ画像の結果を読み取る際に影響する。神経周囲および滑液嚢内の麻酔はMRI検査の前に一般的に行われる。しかしそのMR画像への影響があるか、そしてそれがどのようなものかはわかっていない。
目的
馬の下肢部の神経ブロックおよび滑液嚢内麻酔により、MRIで検出できる医原性の変化が起こるか明らかにすること。
方法
15頭の馬について、投与2-6日前にベースラインとなるMRIを両前肢で行った。メピバカインを、内外側の掌側指神経周囲、ナビキュラー滑液嚢、指屈腱鞘、遠位指節間関節内にランダムに振り分けて投与した。投与後24時間と72時間でMRIを再撮影し、所見を定性的および定量的に評価した。
結果
メピバカイン投与後24時間および72時間のMRI所見は、掌側指神経周囲、ナビキュラー滑液嚢、遠位指節間関節への投与ではベースラインと有意な差はなかった。指屈腱鞘では、投与後24時間および72時間でベースラインと比較して有意な滑液量の増加がみられた。
結論
掌側指神経周囲やナビキュラー滑液嚢、遠位指節間関節への麻酔は、投与後24時間および72時間に得たMR画像を読み取るのに干渉しなかった。しかし、指屈腱鞘への麻酔では、投与後少なくとも72時間以内では滑液の医原性の増量が検出できた。
潜在的関連性
指屈腱鞘の腫脹がどの時間で解消するかまでは明らかにできなかったが、指屈腱鞘内麻酔を行った後は3日以上待ってMRIで評価することを推奨する。”