育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

X線検査で診断のつかない球節のMRI所見(Kingら 2013年)

以前、診断麻酔についてまとめた報告をしたことがあります。球節部に疼痛があると判断した馬のなかで、X線や超音波検査で診断がつかなかった症例は、〇%でした。この場合、どこに原因があるかよくわからず、症状が緩和するまで一定期間休養するしかありませんでした。

では、より高次の画像診断であるMRIを使えば診断できるのでしょうか。

 

文献でわかったこと

球節部の跛行の原因は69.8%が単独の軟部組織損傷でした。最も多いのは種子骨靱帯炎で、特に斜種子骨靱帯炎と直種子骨靱帯炎が多く認められました。これは超音波検査でも診断可能なことがありますが、腫脹を伴わない場合には判断が難しいことがあります。やはりMRIがあれば詳細な診断がつけられそうです。

   

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

診断麻酔で球節部を原因とする跛行で、X線検査で診断のつかなかった232頭について評価した。全て高磁場MRIを用いて跛行のある肢と比較のために対側肢の撮影を行った。前肢の両側に異常所見がある馬は46頭おり、このうち27頭は検査時点では対側肢の跛行はみられなかった。後肢では両側に所見がある馬は37頭で、このうち22頭は対側肢の跛行はみられなかった。162頭、218肢では、軟部組織の異常のみ認められた。34頭、43肢では軟骨下骨または関節軟骨の異常が認められた。36頭、64肢では、軟部組織と軟骨下骨および軟骨の異常が認められた。主要な異常所見の割合は以下の通りであった。斜種子骨靱帯炎(56頭、73肢)、直種子骨靱帯炎(38頭、44肢)、慢性軟骨下骨損傷(12頭、15肢)、繫靱帯脚炎(12頭、14肢)、側副靱帯炎(12頭、12肢)、浅屈腱および深屈腱炎(10頭、10肢)、1cmより大きい軟骨下骨欠損(6頭、9肢)、1cm以下の軟骨下骨欠損(7頭、8肢)、骨髄損傷(5頭、6肢)、種子骨間靱帯炎(4頭、5肢)であった。MRIは、X線および超音波検査で診断がつかなかったときに、骨や軟部組織損傷の診断に有効である。