育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

馬の成長板軟骨におけるALPの局在(Hensonら 1995年)

骨代謝のマーカーとしてモニタリングされることの多いALP(アルカリフォスファターゼ:アルフォス)について馬での軟骨における活性動態を調べた文献があります。

 

 

はじめに

この文献では、まず成長板に存在する軟骨を、その形態や代謝に基づいて3つに分類しました。それは、関節部articular、増殖部proliferative、肥大部hypertrophicです。

軟骨内骨化は、軟骨細胞で産生された細胞外気質が骨細管を通って骨芽細胞に届くことで始まります。さらに肥大部では基質が小胞に蓄積し、リン酸とカルシウムが関連したメカニズムで、石灰化に理想的な環境が形成されます。

ALPは肝臓型/腎臓型/骨型のアイソザイムがあります。成長板では小胞膜状に発現するALPが石灰化にかかわっていることが示唆されていますが、正確な役割は分かっていません。これまでに他の動物種において、肥大部の軟骨細胞においてALP活性が最も高いと報告されていて、初期の骨形成に関連していると考えられています。

 

馬の長骨は5歳まで成長を続け、その期間に多種の成長期整形外科疾患が発生する。例えばOCDやボーンシストが挙げられますが、これらは成長する軟骨が関わっていて共通する病態があるかもしれませんが、馬では正常な軟骨の代謝や軟骨内骨化に関する基礎的な情報が不足してるのが現状です。

 

研究の目的
  • 正常な馬の成長板、関節/骨端に存在する軟骨細胞のALP活性を調査すること
  • 6ヵ月以上の年齢の馬において年齢によりALP活性を比較すること
  • 解剖学的に異なる部位の成長板におけるALP活性を比較すること

 

結果と考察

光学顕微鏡による評価では、ALP活性は成長板および骨端/関節の両方で認められ、骨化にかかわっていることが示唆されました。ALP活性は関節/骨端の骨化中心に近い部位だけでなく成長板の逆側でも高く、これは2次的な骨化中心にもなっていることが示唆されました。これは他の動物種での報告と一致しました。

ALPの活性は年齢と部位のどちらにもかかわっています。成長板閉鎖後は活性が低く、成長が最も著しい6ヵ月未満では最も高かったです。成長板閉鎖は部位によって時期が違うので、それにALP活性も影響を受けました。また、活性の高さは成長板に存在する軟骨細胞の数にも依存しました。すべての部位で、6ヵ月未満の馬が最も活性が高いと示されました。

 

電子顕微鏡による評価では、軟骨細胞の表面にALP活性があり、その範囲は増殖部から肥大部で、肥大部をピークにグラデーションとなっていました。

骨化が進むとALP活性は低くなり、これはカルシウムイオンによる抑制がかかると考えられています。また、細胞外基質が変化していくこととも関連しているようです。

この研究は、馬において骨形成のマーカーとして成長板のALP活性が使えることを示した初めて研究で、ALP活性が軟骨内骨化のステージや骨形成によって活性が異なることも示しました。

 

参考文献

www.ncbi.nlm.nih.gov