育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

スタンダードブレッドの成長板閉鎖と成績や損傷との関連(Gabelら 1977年)

成長板の閉鎖は、長骨成長の終わりを反映しています。これまでに紹介してきたとおり、その時期は部位によって異なり、サラブレッドであれば5-6歳まで成長することが知られています。

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骨の成長の指標となることは分かりましたが、骨が成長していれば(骨格が完成に近づいていれば)、パフォーマンスはより高くなっていくのでしょうか。スタンダードブレッドの競走馬を対象に、成長板の閉鎖と成績および損傷との関連について調べた、少し古い文献があります。

 

文献でわかったこと

113頭の2歳スタンダードブレッドについて、継続的に橈骨遠位のX線検査を行い、成長板を評価しました。

橈骨遠位の成長板閉鎖が確認できた月齢は、平均29.8±1.6ヵ月(26-35ヵ月)でした。この月齢は性別、競走、血統による違いは見られませんでした。2歳馬は成長板閉鎖前にほとんどが出走していました。生まれた時期の平均は1973年5月30日、成長板閉鎖の平均は1975年9月25日でした。

80頭が出走し、平均10.5回出走で、46頭が勝利し、その平均は2.6勝でした。成長板が閉鎖していくにつれて、出走を果たし、勝利し、ベストタイムを出すことができた。年齢や成長板閉鎖と獲得賞金、勝ち数、ベストタイムとの関連はみられませんでした。

113頭中62頭(55%)が損傷をしていて、大きな損傷が19件、小さな損傷が57件ありました。損傷の発生率と成長板閉鎖のグレードの間に関連はありませんでした。損傷の数は出走数、勝利数、獲得賞金およびベストタイムとの間に関連は認められませんでした。

このように、ほとんどは統計学的には関連がないと考察されていましたが、若干ながら傾向が認められた要素もありました。完全に成長板が開いている(未熟な)馬は、成長板がより閉鎖に近づいている馬と比較して、出走回数が少なく、損傷の発生率が少しだけ高いことが示唆されました。

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov