育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

足根骨骨折を保存的に管理した25例の長期成績(Murpheyら 2000年)

飛節構成骨である足根骨は、近位-遠位方向の体重による負荷を受け、盤状に骨折します。

大きな骨片は内固定術を行うことが推奨されていて、競走中により大きな負荷がかかると想定されるサラブレッドでは、保存療法では競走復帰の率が低いことが知られています。

また、骨癒合が遅延し、骨関節炎がおきると、慢性的な跛行が続くこともあります。

 

今回紹介する文献は、足根骨盤状骨折を馬房内休養による保存的治療を選択した症例についての回顧的調査です。

これによると、サラブレッド競走馬で競走復帰し5回以上出走した馬は2頭/6頭しかいませんでした。また、スタンダードブレッドを含む競走馬において、中心足根骨は2頭/7頭、第三足根骨は10/13頭の復帰率で、中心足根骨のほうが低いことが明らかにされました。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 中心足根骨と第三足根骨の盤状骨折発症馬の臨床的特徴を明らかにすること、手術以外の治療を行った馬の成績を報告すること。

 

デザイン

 回顧的研究

 

動物

 25頭の馬(スタンダードブレッド14頭、サラブレッド6頭、クォーターホース5頭)

 

方法

 中心足根骨(9頭)および第三足根骨(16頭)の盤状骨折発症馬の医療記録を回顧的に調査した。本研究では馬房内休養により治療した馬のみ含めた。臨床検査やX線検査の特徴を記録した。生涯の競走成績を公式記録から得た。クォーターホースは、馬主への聞き取り調査で成績をつけた。

 

結果

 16頭(64%)は良好な成績であった。骨折後、競走復帰し5回以上出走した馬は、スタンダードブレッドで14頭中10頭(71%)、サラブレッドで6頭中2頭であった。追跡調査が可能であったクォーターホースは5頭中4頭で、もとの運動に復帰できた。性別、年齢、患肢、歩法は成績との関連はなかった。競走馬において、中心足根骨で良好な成績を残した馬は2/7で、第三足根骨骨折で良好な成績を残した馬は10/13であり、中心足根骨のほうが有意に低かった。

 

結論と臨床的関連性

 この結果から、外科的な固定をせず休養することは、運動機能が期待される場合でも、中心および盤状骨折の効果的な治療オプションであることが示唆された。