育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

さまざまな用途の馬の蹄骨骨折285頭と223頭の長期経過(Rijkenhuizenら 2012年)

蹄骨骨折にはさまざまな型があります。

単純な骨折でも、蹄関節におよぶ骨折は癒合することが難しいだけでなく、二次的な骨関節炎を起こす可能性が高く、跛行が持続してしまうことも多くあります。

ここでは、成馬になってから骨折した、さまざまな馬の異なるタイプの骨折についての治療成績が報告されています。

この調査では関節面におよぶ骨折でも7割程度が運動復帰することができました。X線検査で骨折線が消失していなくても運動に復帰することができました。また、治療には舎飼いなど運動制限が重要で、蹄の固定による不動化処置は特に必要ないとのことでした。

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

臨床的な根拠に基づいて蹄骨骨折の管理を改善するために、複数施設での285頭の調査を行った。症例の治療成績は223頭で入手可能であった。関節におよんでいないⅠ型骨折はもとの運動や期待するレベルの運動に復帰したのは91.7%で予後は良好であった。関節におよぶタイプのⅡ型またはⅢ型骨折は、それぞれ69.6%および74.1%が復帰した。 Ⅳ型の復帰率は57.7%、Ⅴ型の復帰率は57.1%であったが、Ⅵ型の復帰率は80%と良好であった。後肢の骨折では治療成績が有意に良好であった。年齢、治療開始までの時間、治療の成功率には有意な関連は認められなかった。Ⅰ~Ⅲ型骨折の治療における最良のオプションは保存療法(舎飼い)であった。Ⅳ型骨折は関節鏡により骨片を除去するのが最良であった。蹄の不動化は結果に影響しないと思われた。X線所見と臨床的な治癒は正確には関連がなく、トレーニングの再開はX線所見よりも臨床症状に基づいて行った。運動復帰が成功するには、骨折部の完全な骨癒合は必須ではなかった。