育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

中心および第三足根骨盤状骨折の内固定術成績(Winbergら 1999年)①

はじめに

足根骨の骨折は、競走馬で報告され、特にスタンダードブレッド種での治療報告が多い疾患です。第三足根骨のほうが中心足根骨よりも多いという報告もありますが、まだ症例数の多い報告はありません。骨折の発生は、足根骨の背側面で最も起きやすいとされています。

この骨折では骨片が変位しているときでさえ、腫れがほとんどないことが多く診断は難しいとされ、特に中心足根骨の骨折では下腿足根関節の腫脹は一貫してみられるものではないことが報告されています。たいていは強調教後の重度の跛行がみられ、数週すれば跛行は消失します。

X線検査は有用ですが、通常の撮影方向では検出できないことがあり、少しずつ角度をずらして撮影する、または1-2週間空けて撮影することで検出できることがあります。早期検出にはシンチグラフィ検査が有効ともいわれています。

第三足根骨と中心足根骨の骨折治療は数が少ないですが、保存療法では良好な復帰とならないことがあり、治療期間が長く、DJDも起きやすいとされています。

 

参考文献 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

中心または第三足根骨盤状骨折を、内固定により20頭治療した。このうち18頭はスタンダードブレッド競走馬、1頭はサラブレッド競走馬、1頭はスウェーデン温血種であった。中心足根骨が12頭、第三足根骨が8頭であった。骨折の内固定はラグスクリュー法で行い、3.5または4.5mmのスクリューを1本(18頭)または2本(2頭)用いた。術後は1ヵ月間馬房内休養し、 その後は徐々に運動を増やすプログラムとした。3-8ヵ月かけて立ち上げ、調教を再開した。15頭は問題なく運動することができた。スタンダードブレッドは12頭(72%)が術後に出走し、サラブレッドも出走できた。術後出走した13頭のうち9頭(69%)は勝利した。