育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

中心および第三足根骨盤状骨折の内固定術成績(Winbergら 1999年)②

その①

equine-reports.work

 

症例

スウェーデンの馬病院で足根骨盤状骨折を診断し、内固定手術した20頭。

【血統と用途】

18頭はスタンダードブレッド競走馬、1頭はサラブレッド競走馬、1頭はスウェーデン温血種で馬術競技馬。

【年齢】

年齢は1-8歳で、15頭(75%)は2-4歳の年齢であった。

【性別】

14頭はメス、6頭はオス。

【発症部位】

12頭は中心足根骨、8頭は第三中足骨。20頭中13頭は左後肢に発生した。

 

X線検査の診断手技

ルーティンな検査は4方向(背底、内外45度斜位、内外像)。それに加えて、最も骨折線が検出されやすい15度斜位像から5度ずつ角度をつけて撮影した。距骨外側滑車の遠位背側をランドマークとして角度を調整した。

初診から6-8週間おきに骨折の治癒が確認できるまで継続的にX線撮影を行った。この撮影は少しでも正しい角度からずれると仮骨を過大評価してしまうため難しい。

 

手術手技

術前の抗菌薬と抗炎症薬投与はなし。全身麻酔患肢を上にした側臥位で、できるだけ伸展した状態で保定した。飛節から20cm近位で駆血帯を巻いた。

ほとんどの骨折は背外側に位置しており、初めに針を刺してX線撮影し角度を確認した。特に皮下腫脹を伴う症例で有効。

ほとんどの症例で、飛節の直上で外側趾伸筋の外側に6-8cmの皮膚切開を行った。背側に骨折が位置する症例では外側趾伸筋の内側からアプローチした。切開は短趾伸筋の体部に達するまで線維を長軸方向に裂くように皮下をかき分ける。近位では足背動脈を傷つけないよう注意した。

背側の靱帯を切開し、1または2本のスクリューで固定した。ほとんどの症例で、4.5mmの皮質骨スクリュー(24-28mm)を用いた。骨片の厚みが5-6mmしかない症例では、3.5mmの皮質骨スクリューを用いて固定し、カウンターシンクはしなかった。2頭で初めに打ったスクリューで固定が不十分だったため2本目のスクリューを入れた。

術後は3日間抗炎症薬(フェニルブタゾン)、5日間抗菌薬(Novocillin)を投与した。

術後14日で抜糸するまでバンテージを巻いた。術後1ヵ月は舎飼いとし、その後は引き運動の時間を状態に応じて徐々に延ばした。X線検査で骨折治癒が確認されるまでは、局所の熱感や腫脹および跛行を原因として運動を制限した。6-8週間ごとに定期的に検査し、この間馬を自由に運動させることはなかった。

 

参考文献 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

中心または第三足根骨盤状骨折を、内固定により20頭治療した。このうち18頭はスタンダードブレッド競走馬、1頭はサラブレッド競走馬、1頭はスウェーデン温血種であった。中心足根骨が12頭、第三足根骨が8頭であった。骨折の内固定はラグスクリュー法で行い、3.5または4.5mmのスクリューを1本(18頭)または2本(2頭)用いた。術後は1ヵ月間馬房内休養し、 その後は徐々に運動を増やすプログラムとした。3-8ヵ月かけて立ち上げ、調教を再開した。15頭は問題なく運動することができた。スタンダードブレッドは12頭(72%)が術後に出走し、サラブレッドも出走できた。術後出走した13頭のうち9頭(69%)は勝利した。