その① はじめに
その② 調査の内容
その③ 成績
考察
病態について
筆者らの病院で行った内固定術のうち5%がこの骨折。スウェーデンではスタンダードブレッド競走馬に多くみられる。
遠位足根骨は運動中に軸側の圧迫する力と捻れや張力を受け、これが競走時に大きくなって骨折する。靭帯損傷の結果、足根骨の動きが同期されず発症する可能性がある
この研究では右7より左13の方が多かった。走行時に内側となる肢が多い。実際に14/19(74%)は内側の発生であった。過去のサラブレッドとクォーターホースの結果からも支持される。しかし他の2報では等しく発生するとされている。
性別について
馬主は牝馬では競走成績を向上させるため、より手術に乗り気だったが、これは引退後の価値を高めるためであった。これは牡馬では優秀な馬にのみあてはまる。よって性別は偏りがあった。
診断について
このタイプの骨折は、X線が決定的でない場合にはシンチグラフィ検査が有効である。シンチグラフィ検査の普及によって近年診断される症例が増えてきた。
関節内麻酔を行った症例も過去に報告されているが、筆者は避けるべきだと考えていて、それは完全に負重することでさらに損傷を悪化させてしまうからである。したがって、この研究の症例では関節内麻酔は行っていない。
骨折部位について
症例の骨折部位は中心および第三足根骨の背側4頭、背外側9頭で多数を占めた。Lindsayら、Tulamoら、Foernerらも主に背側に発生すると報告している。Nixonは中心足根骨の背内側に主に発生すると報告しているが、これは今回1頭のみであった。中心足根骨の背外側骨折は過去に1頭しか報告がないが、今回は4頭(33%)を占めた。中心足根骨の背外側骨片骨折は報告があるが、これは他の骨折も併発しており別ものである。中心足根骨の粉砕(複骨折)は4頭で報告があるが、今回はみられなかった。
成績に影響する因子について
術後出走できなかった2頭の中心足根骨底側の骨折を除き、骨折した骨やその部位は成績に影響しないと思われた。
第三や橈側手根骨と同様に、変性性骨病変は骨折線周囲の骨融解像としてみられ、盤状骨折が起きやすくなる可能性がある。また、この病変があると術後の結果に負の影響を与えると提唱されている。本研究では骨折線は全て鋭く、このタイプの病変はX線検査で認められなかった。