育成馬臨床医のメモ帳

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繫靱帯脚部のSplitには非負重時の超音波検査(Werpyら 2020)

繫靱帯脚部の評価として一般的に用いられる検査方法は超音波検査です。しかし、近年より高度な画像診断であるMRIが立位鎮静下で実施可能となり、これまで判明していなかった病態が明らかになってきました。MRIと超音波検査では画像診断装置の仕組みが違うために不一致もあります。しかし、検査条件を変えることで評価できるようになる可能性があることが示唆されています。

繫靱帯脚部のSplit(長軸方向に裂けたように見える損傷)は、非負重時の超音波検査によって、より詳細な評価が可能となるようです。このようなタイプの損傷が臨床的にどのような価値を持つかは今後研究しなければなりません。

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

繫靱帯脚部の裂けた損傷(Split)を評価するとき、高磁場のMRIと負重した状態での超音波検査所見の間には一致しないところがある。本研究は記述的、回顧的症例集で、繫靱帯脚部を負重時と非負重時で超音波検査を行った。繫靱帯脚部の裂けた損傷は、負重時にはエコー輝度の低下した線状領域に見えたが、非負重時にはより大きく、無エコー性の病変として見えた。これは繫靱帯脚部の病態を示唆すると考えられる。本研究では、34頭の62の繫靱帯脚部を組み入れた。このうち14は部分的な損傷、11は実質までおよぶ損傷、14は完全な損傷でこのうち2つは裂け目に関節液および関節包が入り込んでいた。診断から14ヵ月までの再検査を行ったのは8頭で、このうち2頭は損傷が残存、5頭は部分的に治癒、1頭は完全に治癒していた。非負重時の超音波検査は、負重時と比較して損傷の視認性を向上するために価値があると示された。繫靱帯脚部において、長軸方向の線維配列の乱れ(裂け目)などの特定の異常は、非負重時の超音波検査でしか明らかにならないかもしれない。非負重時の超音波検査により、損傷の重症度を正確に評価し、時間をおってモニタリングすることが可能になる。繫靱帯脚部の裂けた損傷が持つ臨床的関連性を明らかにするためには、長期的な調査が必要である。