競走馬が受けている調教が、どんな損傷のリスクになるかというのは非常に難しい問いです。
それぞれの馬の状態に合わせて調教を行うことが普通ですので、一貫した条件がなく、明確なリスク因子を特定することは、回顧的調査では難しいです。
香港における競走馬の腱損傷に関する調査では、発症馬と対照馬で比較すると、損傷前に何か異常があって獣医検査を受けていたり、加減しながら長期間調教を受けていたり、高齢で短期間に競走で走った距離が長いことが明らかとなりました。
なんとなく感覚と一致するところでしょうか。特に検査を受けていたり、強度の低い運動を長めに行っている馬は、高リスクなのかもしれません。
参考文献
目的
サラブレッド競走馬の集団における、腱損傷が原因で引退するリスク因子を同定すること。
動物
香港ジョッキークラブに所属し、1997-2004年の期間に腱損傷により引退した175頭および引退前に速いペースの調教を行っていた損傷のない馬を3頭のうちからランダムで対照馬として選んだ。
方法
すべての馬に関する調教データを調査した。条件付きロジスティック回帰解析を行い、腱損傷による競走馬引退のリスク因子を同定した。2つの多変量条件付きロジスティック回帰モデルを作成し、それぞれに8つの説明変数を設定した。
結果
対照馬と比較して、症例馬は輸入時の年齢が高齢で、輸入後すぐにレースの距離の合計が増えており、獣医検査および超音波検査を受けた率が高く、生涯の出走回数が少なく、調教期間が長く、最後に速い調教を行う前の180日間で調教強度が低いことがわかった。
結論と臨床的関連性
本調査でサラブレッド競走馬における腱損傷のリスク因子を同定した。加えて、この結果から、正確な調教データを集めることに主眼を置いて、競走馬における腱損傷の発生に関する国際的に合意を得た基準を無視すると、データは見当違いのものとなることも示唆された。しかしながら、調教強度を変えることや、過去の臨床検査の所見は、腱損傷に関連した引退のリスクがある馬を同定することに使える。