馬の胃潰瘍は、競走馬のほとんどにみられる疾患であることが、数々の調査で判明しています。
今回紹介する文献では、345頭(うちサラブレッド331頭)のうち、86%で胃潰瘍がみつかったとされています。胃粘膜が損傷した状態を評価する重症度分類は、潰瘍の深度や面積に基づいて行われます。この研究における胃潰瘍の分類は、「G0:所見なし、G1:粘膜表面のみ、G2:一部粘膜下織に達する、G3:粘膜全層に達する」でした。さらに胃粘膜の半分以上に潰瘍が認められる場合、ひとつグレードを上げるというルールが定められていました。
この調査では、幽門部(胃の出口に近いところ)の評価も行われていました。おもに胃酸を分泌する腺部粘膜がほとんどを占めるこの領域は、175頭で評価され、このうち47%に潰瘍がありました。また、この部位の潰瘍のグレードは低いことも明らかとなりました。
参考文献
目的
競走馬の集団における胃潰瘍の所見率と割合を報告し、幽門部および幽門洞の潰瘍の内視鏡所見を記述すること。
デザイン
回顧的症例研究
方法
345頭(331頭のサラブレッドと14頭のスタンダードブレッド)の競走馬の胃内視鏡検査の医療記録を回顧的調査した。胃潰瘍の所見率、発生分布および重症度を記録した。無腺部および腺部粘膜の病変について、幽門洞と幽門部をグレード分類して比較した。
結果
競走馬の86%で胃潰瘍が見つかった。ヒダ状縁周囲の無腺部に最も多くみられた。幽門部は175頭で検査され、47%に潰瘍があった。無腺部粘膜の病変があることと、幽門部の病変があることに関連はなかった。病変の部位と重症グレードには低い相関がみられ、幽門部の潰瘍スコアは明らかに無腺部潰瘍のスコアより低かった。
結論
胃潰瘍は競走馬の多数にみられる。幽門部は重要な潰瘍の部位である。潰瘍が1か所にあることと、その他にあることとは関連がなかった。しかし、部位と病変のグレードには弱い相関があり、幽門部潰瘍のグレードは低かった。