育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

2歳馬のトレーニングセール時にみられるX線異常所見率とパフォーマンスとの関連(Meagherら2013)

2歳トレーニングセールは、調教を積んで速く走れるようになった馬を、公開調教にて実際に走っている姿を見て購入できるセリです。

レポジトリ検査も公開されており、現時点では調教可能だが、その後に与える影響はどうか、が調査されています。

X線検査において、約3割に異常所見が認められたと報告されています。病変がない馬と比較すると、球節の骨片骨折や種子骨骨折または種子骨炎、足根骨の楔型形状が出走でき、いくら稼げるかということに関連しているとされています。これらは将来的に骨関節炎、繫靱帯脚炎および骨折に繋がる可能性がある所見ですが、セリの時点で今後の影響を推察することは難しいです。

   

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 2歳トレーニングセールにおけるサラブレッド競走馬のX線異常所見率を算出すること、これらの所見および公開調教での1ハロン(*注200mのこと)走行タイム とその後の競走パフォーマンスの関連を明らかにすること。

 

デザイン

 回顧的コホート研究

 

動物

 953頭のサラブレッド

 

方法

 セリのレポジトリーX線検査より、腕節、前肢および後肢の球節、膝関節および飛節について評価した。病変はそのタイプおよび部位から分類した。競走パフォーマンスの変数は、病変の有無での比較と1ハロン走行タイムが11秒以上または未満で分類して比較した。

 

結果

 299頭の馬が1つ以上の病変を持っており、654頭では病変はまったく認められなかった。病変がない馬と比較して、出走および賞金獲得するオッズは、病変がひとつでもあると低くなり、第一指骨近位背側関節面辺縁(球節)の骨片骨折、近位種子骨の骨折または種子骨炎、中心および第三足根骨の楔型形状といった所見があると低かった。出走した馬で病変がない馬と比較すると、第一指骨近位背側の骨片骨折は生涯獲得賞金が低いことと関連があり、大腿骨内側顆の平坦化所見は3歳時の出走回数が少ないことと関連があった。調教タイムが1ハロン11秒を切った馬は、それより遅い馬と比較して、生涯出走回数、獲得賞金のオッズが高かった。

 

結論と臨床的関連性

 X線検査において、とある異常が認められれば全頭出走できないというものはなかった。出走した馬では、病変の有無によるパフォーマンスの差はほとんどなかった。