ひどい捻挫か?球節炎か?と思うような症例のなかには、第三中手骨遠位掌側における横方向の疲労骨折が発生している可能性があります。
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この疾患は、初診で確定することが非常に難しく、この調査においても61%が見逃されたと報告されています。
特徴は、多くの症例が跛行を伴うこと、軟部組織の腫脹を伴い、球節の屈曲痛を伴うことです。この特徴は、球節の捻挫と共通するところが多く、触診だけで判別することが難しいです。
X線検査においても、初診で所見が得られることは多くなく、ごくわずかな骨増生や副管骨の反りが見つけられる程度です。多くは1-2週間程度経過してから、明らかな骨吸収や骨増生が出てくることで診断できます。
しかし、診断できて適切な休養期間をとることができれば、78%と非常に高い復帰率が示されています。
背景
第三中手骨遠位掌側皮質骨の横方向の疲労骨折についてはほとんど記述がない。
目的
この損傷の典型的なシグナルメント、共通する臨床症状やX線所見および予後について記述すること。
研究デザイン
回顧的、病院における症例集、競走成績の追跡調査
方法
香港ジョッキークラブにおいて、2011年から2019年の期間に調教している競走馬のうち、第三中手骨の遠位掌側横方向の疲労骨折と診断した症例を調査した。医療記録を回顧し、症状の記録を調査した。所定のX線所見リストから所見を記録した。年齢、調教プロフィール、臨床およびX線所見、騎乗運動復帰までの期間について記述統計を用いた。
結果
症例は23頭であった。症例の多く(57%)は直近で出走していたか、休養から調教復帰したばかりであった。そして、35%(8頭)は、損傷した時点ではまだ時計を出す程度のギャロップを行っていなかった。ほとんどの症例(20/23;87%)で跛行がみられ、9頭(37%)は重度の跛行を呈した。局所的な腫脹や表面の軟部組織腫脹は15/23(65%)で認められた。第三中手骨遠位部の触診痛は15/23(65%)、球節の屈曲痛は12/23(52%)で認められた。拡散した局所的なX線透過性の増加(70%)、骨膜表面の輪郭の分断(67%)および副管骨遠位端の外側への変位(67%)といった所見は、早期の症例で共通してみられるX線検査所見の特徴であった。61%(16/23)の症例は初診時には診断できなかった。ほとんどの馬(18/23)は、中央値83日で調教復帰、中央値246日で競走復帰を果たした。
主な制限
症例によって臨床記録が一致しない。X線検査を行った時点が異なる。
結論
調教している馬は第三中手骨遠位掌側の横方向の疲労骨折を発症するリスクがあり、ややこしい臨床症状とわずかなX線所見しか得られない。長期的な見通しは良好である。