近位指節間関節は、第一指骨と第二指骨の関節で、繫関節とも呼ばれます。
掌側には、反軸側には浅屈腱が付着し、軸側には掌側靱帯などが付着しています。また、第一指骨側に関節包が大きく付着しています。
この関節内の骨片は跛行の原因となることがあり、さらに慢性的な関節炎を引き起こすと、指骨瘤(ring bone)と呼ばれる状態となります。こうなってしまうと、跛行が持続してしまいます。
アプローチできる症例は限定的ですが、掌側の骨軟骨片を摘出した症例が報告されています。うち2頭は診断麻酔によりこの関節を原因とする跛行と特定されており、手術後はもとの用途の運動に復帰することができました。
目的
近位指節間関節の掌側または底側の骨軟骨片を関節鏡視下で摘出した馬の解剖学的考察と関節鏡テクニックを記述すること。
研究デザイン
回顧的研究
動物
近位施設間関節の掌側または底側に骨軟骨片を認めた成馬4頭
方法
全身麻酔下、仰臥位にて、近位指節関節の掌側/底側から骨片を関節鏡にて摘出した。医療記録を回顧的に調査し、症例の経過、身体検査、歩様検査、X線所見、手術手技、合併症および成績を明らかにした。
結果
2頭で近位指節間関節を原因とする跛行がみられた。2頭は跛行が疑われたが、繋部領域とは確定できなかった。1頭は間欠的な跛行歴があったが、来院時には跛行していなかった。すべての馬でX線検査において、近位指節間関節の掌側/底側に骨軟骨片が確認できた。2頭は後肢反軸側に骨片がみられ、2頭は左前肢の軸側に骨片がみられた。すべて掌側/底側からの関節鏡アプローチで摘出することができた。3頭はもとの運動パフォーマンスに復帰し、1頭はレイニング競技に出ていたが、術後は外乗する程度に使われた。
結論
近位指節間関節の掌側/底側関節包への関節鏡手術により関節の限定的な評価と骨片摘出が可能であった。
臨床的関連性
近位指節間関節の掌側/底側関節包への関節鏡手術で、骨片の評価と摘出が可能であり、この関節に起因する跛行が見られたときはこの手術を考慮すべきである。