育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

第一指(趾)骨掌側/底側の軸側骨片に対する関節鏡視下除去手術119頭(Fortierら1995)

第一指(趾)骨の掌側または底側の軸側にみられる骨軟骨片は、近年のレポジトリ検査の普及により、若齢馬で多く見つかっています。

 

第一指(趾)骨の近位掌側は、軸側よりに十字種子骨靭帯、反軸側に短種子骨靭帯が付着し、さらに反軸側に関節および種子骨の側副靭帯が付着しています。若齢の場合には靭帯付着部の骨折なのかOCD病変なのかは判断しづらいです。

 

今回の文献はスタンダードブレッド競走馬がほとんどの症例報告です。出走歴のあった馬の80%が術後に競走復帰し、63%がもとのクラス以上に復帰したとされています。しかし、これらの症例は歩様検査においてわずか~不明瞭な跛行しかみせていませんでした。しかしながら、関節鏡手術時に、関節軟骨の線維化や滑膜増生など骨関節炎を示すような状態があると、結果が芳しくないようでした。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

第一指(趾)骨の近位掌側/底側面の軸側の骨軟骨片を関節鏡で除去した症例119頭の医療記録を調査した。スタンダードブレッド競走馬は109頭(92%)。3歳未満の馬は93頭(78%)であった。性別の偏りは来院する馬の割合と同じであった。骨片はほとんどが後肢(155/164;95%)にみられ、特に左後肢の内側面(72/164;44%)に発生していた。119頭中21頭(18%)で左右両側に骨片がみられ、15頭(13%)で一つの関節内で内外側に骨片がみられた。15頭(13%)で、脛骨遠位中間稜にOCDを認め、30頭(25%)中心遠位関節(遠位足根間関節)および足根中足関節に骨関節炎所見を認めた。競走馬では87頭中55頭(63%)、非競走馬では9頭中9頭が術後にもとのパフォーマスに復帰した。骨片の数や発生分布、脛骨遠位中間稜のOCD病変の併発または足根骨の骨関節炎と成績に関連はなかった。関節軟骨の線維化や滑膜増殖といった術中の異常所見は、負の成績と有意な相関(P<0.0001)があった。これらの所見は、うまくいかなかった症例の32頭中31%で認められたが、一方でうまくいった馬の55頭中では2%しかみられなかった。