腕節掌側に小さな塵のように見える骨片は、掌側の骨体に由来するよりもむしろ、関節全体の損傷程度を示唆する所見である可能性がある。
手根骨掌側には手根骨間靭帯などが付着していて、関節を安定化させる作用がある。この付着部で裂離骨折する場合、より大きな骨片としてみえる。また、靭帯への異栄養性石灰沈着が起きることも知られている。
腕節掌側の骨片は、関節鏡手術後に約半分が競走復帰し、賞金を獲得することができた。一方で、58%で複数の骨片が認められ、3mm未満の大きさの複数の骨片がある場合には、単一の骨片があった馬よりも成績が悪かった。
目的
腕節掌側の骨軟骨片をもつ競走馬の医療記録を調査し、骨片は関節の病的な変化の重篤度を示唆するもしくは予後の指標となるか明らかにすること。
デザイン
回顧的症例研究
動物
31頭の競走馬
方法
医療記録、X線画像、関節鏡手術のビデオを回顧的調査した。シグナルメント、初めの損傷の部位、数および大きさ、骨片の数と大きさ、外科的な手技に関する詳細についての情報を集めた。競走成績から成績の変数を得た。
結果
31頭が組み入れ基準に合致した。58%で複数の掌側骨片が診断された。3mm未満の小さな骨片が最も多く、52%を占めた。52%が競走復帰し、48%は賞金を獲得し、32%は5走以上走った。複数の骨片があった馬は、単一の骨片があった馬と比較して、術後の1走あたりの賞金およびパフォーマンス指数が有意に低かった。3mm未満の骨片があった馬は、より大きな骨片があった馬と比較して、術後の競走復帰率や5走以上する、もしくは賞金を獲得できる可能性が低かった。
結論と臨床的関連性
競走馬において、腕節掌側の骨片は臨床的に重要な関節の病態を示唆するもので、予後指標として用いることができる。複数の小さな骨片を持つ馬は、背側に単一の骨片がある馬や、大きな1つまたは2つの掌側骨片がある馬と比較して、競走復帰の可能性が低かった。可能であれば掌側の骨片除去も考慮すべきである。