大腿骨外側面に位置する第三転子は、浅臀筋、大腿筋膜張筋、大腿方形筋などが付着する部位で、主に外傷(外力)によって骨折することが多いと考えられていて、原因の多くは点頭や馬房、扉、ゲートなどにぶつかることが挙げられています。
完全に骨片が離断している場合にはX線検査でも診断可能ですが、臀部から大腿部にかけての分厚い筋肉に覆われていて、うまく透過できないこともあります。
第三転子は体表から比較的近い部位で突出していることから、超音波検査による表面の観察が可能です。日本ではできませんが、シンチグラフィ検査と組み合わせることで、診断精度は向上するようです。骨盤骨折と症状が似ているため、必ず骨盤も精査することが推奨されています。
参考文献
大腿骨第三転子に関連した損傷はよくみられるものではないが、馬の跛行の重要な原因である。一方で臨床的に部位を特定することは困難である。この回顧的研究の目的は、第三転子の損傷と推定した馬の集団における超音波およびシンチグラフィ検査の所見を記述することである。
2004-2014年の期間に医療記録を調査し、20頭が組み入れ基準を満たした。
14/20は超音波検査にて、第三転子に骨折と一致する損傷がみられた。跛行の発症は、急性が11頭、徐々に悪化が2頭、不明が1頭であった。1頭を除き全ての馬は診断時に跛行していて、跛行グレードは2-4/5であった。
骨片の離断は5/14で超音波検査のみで診断した。一方で、9/14はシンチグラフィ検査により放射性医薬品の取り込み増加が、強い(3頭)、中程度(5頭)、わずか(1頭)にみられたため、超音波検査を行ったところ骨折が判明した。骨折部の変位がなかった1頭の馬では、放射性医薬品の取り込みは強いものの、超音波検査では異常所見が得られなかった。残りの5頭は、シンチグラフィ検査でわずかな放射性医薬品の取り込みしかみられず、これらは他の部位を原因とする跛行と判明した。
成績の情報がえられた骨折馬12頭のうち、8-18ヵ月の長期のリハビリ後、6頭は用途に復帰できた。
骨折症例の多くは、シンチグラフィ検査の結果が、直接超音波検査へと進む助けとなった。第三転子の骨折は、骨盤骨折で報告されているものと似た臨床的特徴があり、シンチグラフィ検査ができない場合には特に、骨盤と第三転子の両方を検査することを著者は推奨する。本調査における復帰への予後は、これまでの報告よりも良くない。