育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

上腕骨や骨盤の完全骨折リスクと高速調教をしない期間の長さとの関連(Carrierら1998年)

アスリートである競走馬にとって、休養期間を設けることは身体的にも肉体的にも必要なことです。しかしながら、完全なリフレッシュをとれることはあまりなく、比較的強度の低い運動は続けられます。

数ヵ月の休養期間をとったあと、強い調教を始める場合には、上腕骨骨折のリスクが高い期間であることに注意が必要です。特に2-3歳の若い競走馬にとっては疲労骨折とそれに関連した完全骨折を起こしやすいです。

 

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 サラブレッド競走馬において、公式な高速調教の記録が2ヵ月以上ない(休養期間)ことが上腕骨や骨盤の骨折と関連があるか明らかにすること。

 

デザイン

 回顧的調査

 

動物

 上腕骨または骨盤の完全骨折が原因で安楽死となったカリフォルニアのサラブレッド競走馬

 

方法

 年齢、性別、調教、休養期間の数、競走または調教から骨折までの日数、休養期間が終わってから骨折までの日数、休養期間の平均日数、調教の総日数を上腕骨骨折の症例と骨盤骨折の症例で比較した。ケース・クロスオーバー研究を行い、休養後10日および21日のハザード期間と、より通常通り競走や調教している期間を比較し、発生する上腕骨および骨盤骨折の相対リスク評価を行った。

 

結果

 骨盤骨折はメス、高齢、0または2回以上の休養をした馬で多く発生した。上腕骨骨折は3歳のオス馬で1回の休養期間をとった馬に多く発生した。骨盤骨折は上腕骨骨折と比較して、調教の総日数が多く、最後の調教から骨折までの日数が短く、休養後の日数が長かった。休養から復帰後は上腕骨骨折の発生と強い相関があり、ハザード期間である休養明け10日では相対リスク71、21日では相対リスク45であった。

 

臨床的示唆

 上腕骨骨折のリスクは、休養後慎重に調教を再開することで低減することができる。