育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

浅屈腱のエコー所見と基質の加齢の影響ほか(Gillisら)

馬の浅屈腱は、成長や加齢にともない、弾性率(Elastic modulus:物体の変形しにくさを表す数値)が増加することが明らかになっています。

これには、コラーゲン線維の架橋構造が増加することが関係しているようです。

また、年齢が増すごとに浅屈腱の腱線維の横断面積は減少します。浅屈腱は中央部の線維が最も太いですが、これも加齢により減少します。したがって、面積と弾性率には負の相関があります。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

ヒトや他の動物種における研究結果から、腱の強度、弾性率、エネルギー貯蔵能力は加齢により有意な影響を受けることが示唆されてきた。馬の浅屈腱の基質や超音波所見への年齢の影響を明らかにしたかった。2歳から23歳の年齢の馬を立位で左前肢の浅屈腱について、超音波検査で横断面積と平均エコー輝度を計測した。すべての馬は調査の少なくとも6ヵ月前から運動していなかった。安楽殺後、前肢の解剖体から浅屈筋腱を得た。検体は1.5-5.0%の伸展で0.5Hzで100回正弦波パターンで繰り返し負荷をかけ、10分間のクリープおよび応力緩和試験を行った。弾性率、3%伸展での負荷、クリープおよび応力緩和試験をすべての検体について試験した。年齢と弾性率には有意な正の相関がみられた。2歳馬と高齢馬を比較すると、高齢馬は有意に弾性率が大きかった(P=0.007)。年齢を重ね、成熟することは、馬の屈腱の弾性が増すことと関連している。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 腱の形態、非還元性の架橋結合の密度およびこれらの所見と年齢の関連を評価し、これまでに報告さている機械的および超音波所見との関連を評価すること。

 

サンプル

 2から23歳の23頭の馬から、浅屈腱の検体を得た。腱は超音波検査や生体力学的な試験に供してから採材した。

 

方法

 検体は横断面で採取し、背側、掌側、中心、外側、内側領域に分け、横断面積、幅、血管密度(血管数を横断面積で割った数値)を算出した。隣接する検体にはコラーゲンの架橋構造を解析した。

 

結果

 中心部の線維束は他と比べて有意に大きかった。線維束の横断面積は、加齢により有意に減少した。合計横断面積は加齢とは関係がなかったため、線維束の数が年齢により増加するようだ。幅には部位や年齢の影響がなかった。血管数や密度、面積には年齢や部位の影響がなかった。線維束の横断面積は、全体の横断面積と相関があった。一方で、線維束の横断面積は弾性率とは負の相関関係があった。ヒドロキシピリミジンの濃度は年齢により増加する傾向があり、ヒドロキシピリミジンの数値が弾性率と正の相関があることと関連している。

 

結論

 馬の浅屈腱は、成長や加齢によって、構造的な組織がが増し、非還元型の架橋構造が増える。この変化は、弾性率の増加と関連している。