カナダ、モントリオール大学から発表された、10年にわたる化膿性滑膜炎(疑いを含む)症例について、細菌培養検査と薬剤感受性試験をまとめた調査。
これによると、全体の49%から細菌が分離され、成馬(文献によると6ヵ月以上)では、グラム陽性菌が多く分離されました。これらのうち92%はペニシリンとゲンタマイシンに感受性を示しており、細菌培養と薬剤感受性の試験結果がわかるまでに用いる抗菌薬として妥当でした。
地域によって分離される細菌とその感受性パターンは異なる場合があり、このような調査でそれらを数年おきにモニターすることは、非常に重要です。
目的
2008年5月1日から2017年9月24日の期間で、馬二次診療施設で化膿性滑膜炎を疑い治療した馬の滑液サンプルから分離された細菌のうち、よくみられる細菌の抗菌薬感受性パターンを記述すること。
サンプル
108頭の馬から131の滑液検体を採取
方法
回顧的な医療記録の調査を行い、化膿性滑膜炎が疑われた馬を見つけ、細菌培養と薬剤感受性検査の結果を調査した。症例のシグナルメント、滑膜への感染源もしくは疑われる起源、感染した部位、抗菌薬治療、滑液の細胞診、細菌培養と感受性検査の結果についてデータを集めた。馬は年齢によって6ヵ月以上を成馬、6ヵ月未満を子馬と分類した。
結果
細菌培養は、68頭の成馬の70検体中34検体(49%)、40頭の子馬の61検体中18検体(30%)で陽性であった。グラム陽性細菌は成馬のほうが多くみられた、一方で子馬ではグラム陰性菌が多くみられた。多剤耐性菌は検出されなかった。成馬では、グラム陽性菌25株のうち23株(92%)が、ペニシリンとゲンタマイシンのコンビネーションに感受性であった。子馬では、16株中15株(94%)がペニシリンとゲンタマイシンのどちらかまたは両方に感受性があった。
結論と臨床的関連性
馬の感染性滑膜炎における細菌学的なプロフィールと抗菌薬感受性について、定期的に回顧的調査することで、細菌の脅威や抗菌薬への耐性の変化を早期に見つける助けとなる。著者らが調査を行った地域では、化膿性滑膜炎症例のほとんどの馬において、細菌培養や感受性検査を待つ間のエンピリックな抗菌薬治療としてペニシリンとゲンタマイシンの組み合わせは効果的であると示唆された。