前回に続いて球節の骨軟骨片の診断に関する超音波検査とX線検査の比較。
前回はこちら
サラブレッド競走馬の前肢球節に限定した比較を行ったところ、X線検査の骨片検出感度は47%であったのに対し、超音波検査の検出感度は94%で、特に球節横断方向の超音波画像で最も高い診断感度が得られたのとのこと。
超音波検査は骨片骨折が起きやすい第一指骨背側部の観察に非常に優れています。前回の記事でも述べた通り、小さな骨片の臨床的意義に関してはまだ議論があります。
背景
競走馬において、第一指骨の骨軟骨片は一般的な所見である。しかし、X線検査は診断感度を欠くことが報告されており、球節においては超音波検査が検出感度が非常に優れていると成書に書かれている。
目的
サラブレッド競走馬において、第一指骨背側の骨軟骨片の診断における超音波検査の画像モダリティとしての診断感度および特異度を明らかにすること。また、それをX線検査と比較すること。
研究デザイン
回顧的コホート研究
方法
調教中で、前肢球節の関節液増量の病歴があり、のちに関節鏡で第一指骨背側の骨片が確認された56頭のサラブレッド競走馬について、超音波検査とX線検査の記録を回顧的に調査した。症例の月齢は平均26.4ヵ月、標準偏差±5.9ヵ月であった。超音波およびX線検査の所見は、3人が盲検で評価し、観察者間の一致性を検証した。統計解析には中央値を用いた。超音波検査とX線検査による骨片の検出は、関節鏡所見と一致した場合に正確とみなした。McNemar検定を用いて超音波検査とX線検査で正確に診断できた割合を比較した。骨片の有無、骨片の場所、関節内に骨片があるかとその部位について、正しく検出できたか解析を行い、P<0.05を有意水準とした。
結果
56頭の球節81関節を評価した。関節鏡により、合計で99個の骨片が確認された。超音波検査は骨片の検出において高い感度(94%、95%信頼区間は89-99%)、および特異度(97%、95%信頼区間は92-100%)を示し、断面は矢状断面よりも横断面の方が診断感度が高かった(P=0.001)。また、X線検査の診断感度は47%(95%信頼区間は37-56%)で、この集団では超音波検査のほうが有意に高い診断感度を示した。
結論
第一指骨背側の骨片骨折診断において、超音波検査は非常に高い診断感度および特異度を持つ画像モダリティで、なかでも横断面の超音波画像は最も診断感度の高い技術であった。本研究において、X線検査による評価は超音波検査と比較して感度が劣っていた。