はじめに
脛骨顆間隆起の骨折は、X線検査において膝関節内の骨片として認識されます。この骨片の鑑別診断として、前十字靱帯の付着部裂離骨折がありますが、実は発症メカニズムが少し異なるかもしれません。
文献でわかったこと
この回顧的症例調査によると、21症例中12症例(馬房内で去勢した5例含む)で外傷イベントに関連する急性跛行がみられました。
この骨折を診断するためにはX線検査が重要で、頭尾側方向の撮影で最も検出されやすかったですが、なかには屈曲位が最も優れた画像だった症例もあったことから、ルーティンな4方向の撮影を行う必要がありそうです。X線検査では骨片のほかに慢性の病態を反映した骨棘もみられ、このような症例では跛行が持続していました。
超音波検査では、骨片だけでなく、大腿下腿関節内側側副靱帯の損傷や、内側半月板の損傷、半月板靱帯および膝蓋靱帯の損傷も検出されました。
関節鏡による詳細な観察、および解剖学的な考察から、脛骨内側顆間隆起の骨折は、外傷性に膝関節の内外方向に大きな負荷がかかることにより発生するもので、前十字靭帯付着部と解剖学的に近いために、同時に十字靱帯にも損傷が起きるのではないかと推察されています。
いずれにしても、早期に診断し、関節鏡手術による骨片の摘出および関節内の靱帯および半月板の評価を行うことが予後を決定するうえで重要です。
参考文献
背景
馬において脛骨内側顆間隆起の骨折はほとんど報告されていない。
目的
脛骨内側顆間隆起の骨折を発症し、関節鏡により骨片除去した症例の、リン量所見、画像診断所見、手術方法および成績について報告すること。
研究デザイン
複数の病院における回顧的症例シリーズ
方法
脛骨内側顆間隆起の骨折と診断され、外科手術を受けた症例を対象に回顧的調査を行った。追跡調査は再検査または馬主への聞き取りにより行った。
結果
2004-2016年の期間で、9つの病院において21症例であった。外傷歴と急性発症の跛行が12症例で認められた。すべての症例で、大腿下腿関節内側からの関節鏡を用いた骨片摘出術が行われた。前十字靭帯は6例で損傷がなかったが、15例で損傷があり、横断面において25%以下の損傷が9例、25-50%の損傷が4例、50%以上の損傷が2例であった。内側半月板頭側の靱帯は11例で損傷があり、25%以下の損傷が8例、25-50%の損傷が3例であった。内側半月板の損傷は5例でみられ、関節軟骨の損傷は14例で、軽度8例、中程度6例であった。20例で追跡調査ができ、期間は4ヵ月から6年、中央値14ヵ月であった。このうち2例はリハビリ中で跛行なし、13例は跛行なく以前の運動や意図した運動に復帰した。関節軟部組織に重度の変化が見られた4症例は、2例で跛行が続くため安楽死となり、残りの2例も跛行が持続していた。
主な限界
回顧的、複数施設における研究であり、症例数が少ないこと。
結論
脛骨内側顆間隆起の骨折は、多くは外傷イベントに関連していた。積極的な診断と早期の骨片除去手術が推奨される。