育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

競走馬の肩甲骨骨折と疲労骨折

診断麻酔で腕節または前腕以下のブロックに反応しなかった場合、より近位の肘や肩関節などを疑って検査を進めます。

 

肩甲骨や上腕骨の骨折は、先行する疲労骨折に関連して発生すると考えられています。

肩甲骨骨折の起きやすい部位は、遠位で肩甲棘と頚部の繋ぎ目です。

 

 

症状

肩甲骨の疲労骨折では、はじめは動きたがらないことがありますが、明らかな跛行をしめさない可能性があります。また、顕著な跛行を示しても、治癒していないにもかかわらず、すぐに跛行が解消します。

肩甲骨の疲労骨折は、調教開始直後または休養明けに多く発生します。休養後に動きが悪かったり、一時的な跛行を示したときは肩甲骨の疲労骨折を考慮します。休養後に初めて時計を出す前に発生していることがあります。

 

検査

証明されていませんが、肩甲骨疲労骨折の場合、肩甲骨は浅い位置にあるため身体検査で触診により検出できるかもしれません。さらに、疲労骨折のステージが進むと、骨の変化が超音波検査で検出できます。

X線検査では分厚い筋肉がのっかっているため、疲労骨折に関連した骨の変化が検出できることは少ないです。

シンチグラフィ検査では確実に検出できます。

 

リハビリ

肩甲骨疲労骨折はリハビリがうまくいくと骨折が治癒して影響が残ることなく復帰できます。反対に、肩甲骨完全骨折が競走馬の成馬でおきるとほとんど例外なく致命的となります。

 

肩甲骨骨折および疲労骨折で探すべき所見

肩甲骨は大きく平たい骨で、胸にくっついており、肩のブレードとして知られています。肩甲骨の骨折はその遠位に発生します。骨折は肩甲棘の遠位で頚部を横断する方向に発生し、大きくふたつのパートに分かれます。

先行する疲労骨折があると完全骨折がおきやすく、疲労骨折の起きている部位では、もそもそした白い骨組織が作られます。この部位は弱くなり、たいてい通常の運動中に完全骨折にいたります。

CTの断層像では、損傷した肩甲棘の周囲に仮骨形成がみられます。このことは体表からの超音波検査からも骨の輪郭の異常として検出できます。

シンチグラフィ検査では、疲労骨折の初期でも後期でも疲労骨折が検出できます。

 

リスク因子

運動内容をみてみると、未出走馬では調教し始めたときに肩甲骨骨折が多く発生しています。これらは同じ性別や年齢の馬の集団と比較すると明らかに調教が遅れていました。また、出走している馬においては、キャリアが長い馬でみられます。しかしこれらも競走馬の集団と比較すると走行した距離の合計が短かったです。

 

参考文献

https://vorl.vetmed.ucdavis.edu/sites/g/files/dgvnsk4731/files/inline-files/scapula_fractures_062712_v2.pdf