はじめに
様々な血統や用途の馬において、球節内の骨片骨折は背内側に多く発生することが報告されています。球節に骨折した場合には骨片は角がありますが、慢性または陳旧性の骨片は角がとれた丸い形をしています。
研究でわかったこと
英国におけるサラブレッド競走馬の調査では、骨片の73.8%が背内側に発生していました。これは過去の他国における調査と同様でした。
いくつかの症例報告にもあるように、X線検査単独で球節内骨片を検出することは難しく、この研究においても、X線検査で検出できていた骨片は73.3%でした。また、関節鏡視下での観察では軟部組織損傷が非常に多く検出されていて、背側関節ヒダ(Dorsal plica)や背側関節包の裂け目や断裂は、それぞれ対象となった関節の25.6%と18.7%にみられました。球節を原因とする跛行を示した症例では、原因究明のために関節鏡が有効であることが強調されました。
参考文献
背景
サラブレッド競走馬において、第一指骨の近位背側辺縁に発生する骨軟骨片は多く認められる。骨折発生部の分布は、アメリカにおいてサラブレッド競走馬やクォーターホース、ヨーロッパにおいて温血種で記録されているが、英国におけるデータは公開されていない。関節内の軟部組織損傷の併発や、骨折診断の正確性について、サラブレッド競走馬では報告されていない。
目的
英国サラブレッド競走馬において、第一指骨近位背側の骨軟骨片の発生分布を記録すること。また、このデータを他の公開されているデータと比較すること。関節鏡で確認できた関節内の病変の併発を記録し、X線検査における骨片分布の診断正確性を記録すること。
研究デザイン
回顧的、1つの診療施設における、観察研究
方法
2011年から2015年の期間に、ニューマーケット馬病院において、第一指骨近位背側辺縁骨片の関節鏡視下除去手術を行ったサラブレッド競走馬について、手術記録とX線画像を回顧的に調査した。
結果
242頭(85.8%)の馬が平地競走の調教を受けた、もしくはそれに向けて馴致された馬であった。第一指骨近位背側の骨片は、282頭の428関節で認められた。発生肢は、左前194関節(45.3%)、右前188関節(43.9%)、左後20関節(4.7%)、右後26関節(6.1%)であった。骨片の部位は、背内側316関節(73.8%)、背外側32関節(7.5%)、内外側80関節(18.7%)であった。168関節(39.3%)で、軟部組織病変が同時に認められた。骨片はX線検査で320関節(74.8%)において明瞭であった。
主な限界
1歳馬や障害レース調教馬に関しては数が少なく結論から除外した。
結論
第一指骨近位背側の骨軟骨片は、背内側および前肢の発生が多くみられた。左右の偏りはみられなかった。これまでのデータと同様だが、発生肢のばらつきが明らかであった。併発する関節内の軟部組織病変が疾病の原因となるものか、骨片形成につながる他の病的な変化の結果であるかを明らかにするためには、さらなる研究が必要である。X線検査はすべての骨片の位置を正確に診断できるわけではなかった。