先日紹介した乗用馬におけるP1の短矢状骨折の治療成績においては、外科的な治療を選択することで運動復帰できる可能性があることが示唆されました。
2020年に発表された温血種を主とする乗用馬の治療成績の報告では、31頭中27頭がもとの運動レベルに復帰することができ、良好な予後が得られる治療方法であることが示唆されました。一方で、術後1年間の経過観察において、骨折線が残存する症例は13肢/19肢と意外なほど多くありました。X線検査上で残存する骨折線の臨床的意義については議論があるところですが、運動復帰は可能であり、妥当な治療選択であるといえそうです。
参考文献
目的
競走目的ではなく運動している馬で、第一指(趾)骨(P1)の短矢状骨折を発症し、ラグスクリュー法で内固定治療した長期成績を明らかにすること。
研究デザイン
回顧的研究
サンプル
31頭の馬
方法
2008-2014年の期間に、P1短矢状骨折の治療を行った馬の医療記録を回顧した。12か月以上の長期成績は、電話による聞き取り、臨床検査およびX線検査から評価した。
結果
本研究において、症例は温血種が多かった。電話聞き取りによる長期調査では、31頭中27頭がもとの運動レベルに復帰した。少なくとも12ヵ月の臨床検査およびX線検査による評価が可能であったのは15頭、19の骨折であった。このうち、15頭中9頭は速歩で跛行がなく、6頭は軽度の跛行があった。6肢でX線検査上、完全な骨折治癒が確認でき、13肢は骨折線が残っていた。近位のスクリューのポジションは、X線検査上の骨折治癒や、跛行がなく運動できるかとの関連はなかった。
結論
P1短矢状骨折をラグスクリュー法にて治療した馬のほとんどは、もとの運動レベルに復帰することができた。しかし、術後12ヵ月以上経っても、骨折治癒は不完全なままであった。
臨床的関連性
P1短矢状骨折を発症した、競走馬ではない馬に対して、ラグスクリュー法による固定を行うことは、妥当な治療方法であり、意図した用途に復帰できる割合が多かった。しかし、X線検査上、完全な骨折治癒を期待することはできない可能性がある。