育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

肩甲上腕関節の骨軟骨症32例(Jennerら2008)

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 馬の肩関節における骨軟骨症に対する外科または保存療法の成績を回顧すること。

 

方法

 2歳未満で肩甲上腕関節に骨軟骨症があると診断した32頭についての回顧的調査。病変の重症度は内外方向のX線画像における計測に基づいた。追跡調査は競走成績もしくは馬主への電話聞き取りにより行った。成績について、成功は意図した用途でパフォーマンスできることとした。

 

結果

 32頭のうち16頭は両側に病変がみられ、合計48関節であった。両側に骨軟骨症がみられた16頭中11頭は関節鏡手術を行い、うち5頭は両側の関節鏡、6頭は病変がひどいほうの片側の関節鏡を行った。片側の関節に病変を認めた16頭中8頭は関節鏡手術を行った。全体として成績は不良であった。競走馬で出走する可能性があった馬では4頭/26頭(15.4%)しか出走しなかった。一方で競走馬ではない馬は4頭/6頭(67%)が跛行なく意図した用途で運動できた。統計解析によると、血統は成績に有意な影響があった。性別、患肢、片側か両側か、治療法、X線画像における病変の重症度と成績の間には有意な関連はなかった。しかしながら、X線検査における上腕骨と肩甲骨関節面における病変の重症度は有意な正の相関があった。

 

臨床的意義

 若い馬における肩関節の骨軟骨症は、全体として予後は不良であった。これはある程度、血統や用途にも依存する。外科治療と保存療法に有意差はなかった。