脛骨外果骨折について連続して取り上げます。
この骨折は、飛節の外側を構成する脛骨の外果に発生します。外傷に関連して発生することが多く、転倒や転落などのアクシデントはこの疾患を疑う上でのキーとなる稟告です。育成期には、凍った地面での転倒や、ウォーキングマシーン内で暴れた後などに発生するケースがあります。
飛節の外側には、側副靭帯が付着していて、これが関節の安定性を保っています。転倒などの外的な要因でこの関節に大きな力が加わることにより、靭帯が損傷し、さらに付着する脛骨外果に骨折が発生します。
診断はX線検査に基づいて行います。たいていは正面(背底像)もしくは少し角度をつけて背内-底外側方向から撮影することで骨片が検出できます。骨折の原因が外傷性であるという性質上、必ずしも単純な骨折であるとは限らず、骨片が複数に粉砕されていることがあります。X線のみで診断が難しい場合はエコー検査を行うことで骨片の離断を確認することもかのうです。また、エコーでは靭帯炎や付着部炎の有無も評価することができます。
以前は関節切開による骨片摘出が行われていましたが、近年では関節鏡による骨片除去も行われるようになっています。また、骨片が大きい場合には螺子固定が検討されることもあるほか、側副靭帯は関節安定化に大きく寄与するため、保存療法で骨折の癒合を期待することも十分妥当な選択肢となります。
調査でわかったこと
関節鏡による骨片除去手術は、既存の関節切開による骨片摘出よりも侵襲が少ない。外顆には外側側副靭帯が付着しているが、それを部分的に切除して骨片を摘出します。1頭を除き目立った合併症は見られず、22頭中18頭は意図した用途の運動に復帰することができました。
参考文献
研究を実施した理由
脛骨外果骨折に対して、侵襲が最小限である関節鏡により骨片除去手術を行うことは有益であると考えられるが、その効果を示すデータが必要である。
仮説
脛骨外果骨折に対する関節鏡による除去手術は、技術的に実現可能であり、関節内を広範囲に評価可能で、離断した粉砕した骨片や、断裂した短側副靭帯の除去も可能となる。この手技では患者に不利益が起こる確率が低く、入院期間も短くて済み、良好な予後が得られる。
方法
二次診療施設に来院した、脛骨外果骨折の症例で、関節鏡での除去手術を行ったすべての症例の記録を回顧的に評価した。追跡調査の情報は、競走成績および電話での聞き取りによって得た。
結果
すべての症例において、短外側側副靭帯を切開して、関節鏡視下で骨片を除去することができた。1頭で術後の合併症がみられた。全ての馬が術後良好に回復し、追跡調査のできた22頭のうち18頭が以前の用途に復帰した。
結論
脛骨外果骨折の関節鏡による除去は技術的に難しいが、合併症は最小限で、不利益が起きづらく、入院期間は短かった。ほとんどの馬は術後運動に復帰することができた。
潜在的関連性
関節鏡による除去が関節切開より優れていることを考えると、関節鏡手術は脛骨外顆骨折の治療に対する選択肢となる。