育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

馬の半月板シストに対する関節鏡治療(Sparksら2011)

調査でわかったこと

大腿下腿関節を原因とする跛行のうち、半月板のシストはまれな疾患です。

診断は、関節内麻酔により膝関節による跛行と確定してから、関節鏡によって評価することにより可能になりますが、膝関節のOCD治療時に偶発的に発見された症例も報告されています。

関節鏡視下において、シストの切除と半月板のデブリードを行うことで臨床症状を改善することができることが報告されています。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

研究を実施した理由

 馬における半月板のシストの臨床症状、治療および成績について記述するため。馬において半月板の損傷が跛行の原因になりうるという文献的な記述はこれまでにない。

 

仮説

 大腿脛骨関節において半月板のシストはあまりみられない疾患であるが、跛行の原因になりうる。症状は関節鏡視下で切除することで解消する。

 

方法

 半月板のシストと診断し、関節鏡によりシストの切除および半月板のデブリードを2人の外科医によって行った馬の記録を回顧した。臨床成績は、獣医師による最新および馬主への聞き取りにより行った。

 

結果

 半月板のシスト7症例は関節鏡視下でのシストの切除および半月板のデブリードを行った。7頭中5頭は大腿下腿関節を原因とする跛行を呈していたが、2頭は大腿骨外側滑車のOCDに対する診断的関節鏡を行うときに偶発的に見つかった。長期成績が得られた6頭中5頭は跛行がなく、もう1頭は術後11ヵ月で改善した。

 

結論と潜在的関連性

 半月板のシストは多くないが、馬における進行性の跛行と関連する。シストを外科的に切除することで臨床症状の解消または改善が得られ、追跡調査では再発は見られなかった。