調査で分かったこと
腕節の骨片骨折を発症し、関節鏡により除去した症例についての回顧的調査。この術式が報告されてから長らく治療成績をまとめた報告はありませんでした。
2020年にサラブレッドとクォーターホースの競走馬について治療成績が報告されました。これによると、サラブレッド競走馬では412頭中328頭(79.6%)が術後に競走復帰していました。競走復帰できないことにかかわる因子は高齢であること、メスであること、軟骨損傷のグレードが4以上であることでした。
参考文献
背景
競走馬において腕節の骨片骨折は一般的な跛行の原因である。骨片の関節鏡除去手術後の予後は1987年に報告されているが、近年の成功率はほとんどわかっていない。
目的
腕節における骨片骨折の重症度と部位の関連を明らかにすること。サラブレッドおよびクォーターホースの術前および術後の競走パフォーマンスを記述すること。術後の競走に関連する要素を明らかにすること。
研究デザイン
2006-2016年の臨床記録の回顧的調査
方法
10年間の調査期間に、腕節の関節鏡手術を受けた馬の外科記録と競走記録を照合した。シグナルメント、骨片骨折の部位、骨片除去とデブリード後の欠損グレード、手術前後の競走成績について、血統により層別解析した。ロジスティック回帰解析を用いて、競走復帰できないことにかかわる要素を解析した。
結果
828頭の馬(クォーターホース416頭、サラブレッド412頭)の880の腕節で、X線検査で骨片骨折を診断し、関節鏡手術が行われた。両前肢での骨折は、クォーターホースで289頭(65%)、サラブレッドで118頭(27%)でみられた。最も多い骨折部位は、320/659で橈側手根骨遠位背側であった。全体で82%(686頭;クォーターホース358頭、サラブレッド328頭)が術後に出走した。このうち69.5%(476頭;クォーターホース228頭、サラブレッド248頭)は、術前と同じかそれ以上のレベルで出走した。競走復帰しないことにかかわる要素は、馬の年齢が高いこと、牝馬であること、グレード4以上の病変であることであった。術前に出走していたことは保護因子であった。
主な限界
比較のための対照群を含まないこと。
結論
サラブレッドとクォーターホースでは、腕節骨片骨折の部位や病変グレードに有意な違いがあった。術後ほとんどの馬が競走復帰するが、パフォーマンスは病変の重症度に影響を受けた。