育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

若齢サラブレッドの膝関節と飛節のOCD治療(Clarkeら2015)

膝関節OCD(大腿骨滑車)と飛節OCD(脛骨中間稜)は、購買前検査(レポジトリー検査)でよく見つかる病変部位です。

近年ではセリよりも前に検査を行うプレレポジトリーや、スクリーニング検査が増加してきており、OCDの診断が早まってきています。

これらの手術を受けた馬について、その後の競走パフォーマンスについて詳しく調査された報告はあまりありません。

 

調査で分かったこと

オーストラリアのサラブレッドにおいて、当歳から1歳の間でOCD除去手術を受けた馬を対象に、その後の競走成績を調査しました。年齢や性別がマッチする対照群を設定し、症例群と競走成績を比較しました。

膝関節OCD症例馬は対照群と比較して、獲得賞金、出走回数、勝利数が有意に少ないことが示されました。一方で飛節のOCDは出走回数のみ有意に少ないことが示されました。

 

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 大腿骨滑車のOCDまたは脛骨中間稜のOCDが購買前のX線検査でみつかり、関節鏡手術を行った離乳当歳または1歳馬について、競走パフォーマンスに影響するか明らかにすること。

 

研究デザイン

 回顧的症例対照研究

 

動物

 サラブレッド離乳当歳または1歳

 

方法

 膝関節のOCD37頭(オス22頭、メス15頭)、飛節OCD35頭(オス22頭、メス13頭)の症例馬。競走パフォーマンスは、出走回数、勝利数、入着数、獲得賞金、2歳から3歳時の成績と生涯の成績について評価した。症例と年齢および性別のマッチした対照群と、マルチレベル直線回帰モデルを用いて比較した。手術時の年齢および術者の経験が膝関節OCD症例の成績に影響するか、併せて調査した。

 

結果

 膝関節OCD症例は手術時に190-563日齢で、生涯獲得賞金(P=0.043)、生涯出走回数(P=0.001)、生涯の勝利数(P=0.003)が、対照群より有意に少なかった。飛節OCD症例は手術時に127-470日齢で、出走回数が対照群より少なかった(P=0.018)。膝関節OCD症例は、手術時の年齢が若く、術者の経験が少ないことが成績が悪いことと関連していた。

 

結論

 膝関節OCD症例は対照群より競走馬としてのパフォーマンスが劣るようである。手術時の年齢はその後の競走パフォーマンスに影響する。