育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

脛骨中間稜内側面のOCD病変(Kadicら2020)

調査で分かったこと

脛骨中間稜の病変は飛節のOCDでは最も多いとされます。これは骨片が比較的大きく、内外像または背外底内45度斜位像でほとんどが診断できます。

しかし、2020年に掲載されたこの文献では、脛骨中間稜内側面にのみ発生するOCD病変について記述されています。ここでは、評価の難しい中間稜内側面の病変の診断について明らかにされています。実はこのい病変は、脛骨内果を評価するのに適する背外底内10度斜位像によって診断することができます。距骨の滑車が重なるため、明らかに遊離した骨片を診断することは難しいかもしれませんが、輪郭の異常があることは確認できるかもしれません。

飛節の関節液が増量していて、ルーティンなレポジトリ検査の画像で脛骨中間稜、脛骨内果および距骨滑車などの好発部位に明らかな所見がない場合には、脛骨中間稜内側面の病変がないか、慎重に画像を再評価してみるといいかもしれません。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

脛骨中間稜のOCD病変は、内外または背内底外45度斜位像でよく診断される。本稿では、ハグヤード馬病院における症例を回顧的に調査し、医療記録や飛節のX線所見および同一馬のキーンランドセリレポジトリのX線検査について記述する。2008-2018年の期間に飛節の非典型的OCD所見が7頭の1歳馬でみられた。この非典型的な病変は、脛骨中間稜内側縁を起源としていて、背外底内10度斜位像でのみ検出され、45度斜位像では見逃されていた。7頭の症例は診断後、X線画像を回顧・再調査したが、OCDや骨片は45度斜位像のみでは確実な診断ができなかった。本調査では、馬の脛骨中間稜OCDをスクリーニング検査するには徹底的にX線検査をすることが重要で、脛骨中間稜の非典型的な病変は背外底内10度斜位像がないと検出できないことが強調された。