大腿骨滑車稜のOCD
膝関節でOCDの発生が最も多い部位は内側または外側の滑車稜です。X線検査でみえる病変の大きさや範囲、骨片の数などは様々です。関節炎の原因となることがあるほか、跛行を呈すこともあり、なかにはパフォーマンスに影響する場合もあります。
軽種馬におけるレポジトリーのためのX線検査ガイド(47ページ)
調査でわかったこと
先述のように、X線検査でみられる病変は様々ですが、X線検査の所見と関節鏡の所見はあまり一致しないことがわかっています。そこで、関節面を超音波検査で評価するという試みがなされています。
22頭の大腿骨滑車稜OC症例について検査を比較した調査によると、超音波検査を用いた大腿骨滑車稜の関節面OC病変の評価者間の一致性は良好でした。また、病変の重症度評価も良好でした。診断感度は100%、特異度は60-82%となりました。
スクリーニングに使うというグループも出てきており、OC初期病変の検出にも検討されていて、この方法の応用が期待されています。
参考文献
馬において大腿骨滑車稜は骨軟骨炎OC病変がよく発生する部位で、この病変を診断するために通常はX線検査または超音波検査が用いられる。しかし、滑車稜の関節鏡所見とX線所見は相関が低いことがわかってきた。超音波検査をもちいた診断の評価者間の一致性および超音波と関節鏡所見の相関はこれまでに明らかにされていない。本調査の目的は、馬の大腿骨滑車稜の骨軟骨炎病変を、関節鏡の所見を基準として、病変を検出し、グレード分類するためのX線および超音波検査の感度と評価者間の一致性を明らかにすることである。22頭を対象とした。2人の評価者が、関節鏡の所見を知らない状態でX線と超音波の画像を個別に記録した。画像所見は、評価者間および関節鏡の所見と比較した。評価者間の一致性は、X線検査による病変の検出はmoderate-excellent(κ 0.48-0.86)、病変のグレーディングはgood-excellent(κ 0.74-0.87)であった。超音波検査では、病変の検出はgood-excellent(κ 0.78-0.94)、病変のグレーディングはvery good-excellent(κ 0.86-0.93)であった。診断感度は、X線検査では84-88%、超音波検査では100%であった。診断特異度は、X線検査で89-100%、超音波検査では60-82%であった。X線所見と関節鏡所見の一致性は良好(κ 0.64-0.78)で、超音波検査所見と関節鏡所見の一致性はgood-excellent(κ 0.81-0.87)であった。本調査から、馬の大腿骨滑車稜における骨軟骨炎病変の重症度および病変の有無を予測する方法として超音波検査が好ましいことが支持された。