大腿骨滑車稜のOCD
膝関節でOCDの発生が最も多い部位は内側または外側の滑車稜です。X線検査でみえる病変の大きさや範囲、骨片の数などは様々です。関節炎の原因となることがあるほか、跛行を呈すこともあり、なかにはパフォーマンスに影響する場合もあります。
軽種馬におけるレポジトリーのためのX線検査ガイド(47ページ)
調査で分かったこと
この調査では、少ない検体ながら新生子馬から当歳馬の大腿骨滑車を超音波検査で評価しました。さらにその所見を組織学的検査とMRI画像と比較して、診断価値があるものかどうか検証しています。
その結果、若齢子馬では超音波検査により大腿骨関節面の軟骨や軟骨内骨化における血液供給などが評価できることが明らかとなりました。大腿骨滑車に形成されるOCDは、軟骨内骨化や軟骨下骨における血液供給が妨げられることが病態に大きく関わっていると考えられており、進行中のフィールドワークでそれが超音波検査で評価できるか検討しているとのことです。
参考文献
背景
局所的な軟骨内骨化不全による症状のない骨軟骨症病変を検出するため、自然に治癒が進むように早期に管理するために、子馬の大腿膝蓋関節をスクリーニングする非侵襲的な画像ツールが必要である。3テスラの磁化率変化強調MRIおよびCTを用いて近年の調査において、初期の骨軟骨症診断が可能であることが示されたが、この技術は現場でのスクリーニングにおいて実用的ではない。筆者らは超音波検査が臨床症状のない骨軟骨症病変を検出するために現場で使える価値のあるツールであると仮定している。
目的
①新生子馬の健康な、もしくは骨軟骨症の素因がある大腿骨滑車の超音波所見の特徴を記述すること
②軟骨の血管構造および骨化前面を超音波検査で評価することの妥当性
③先行研究において現場で検査できるのか調査すること
研究デザイン
実験的研究
方法
骨軟骨症の素因がある(10)または健康な(6)大腿骨滑車を生体外で超音波検査を用いて評価し、その部位における組織切片およびMRI画像と比較した。関節、骨端軟骨の厚み、骨化前面の凹み、軟骨内の血管構造はそれぞれの関心領域ROI内で評価した。子馬(3頭)の大腿骨滑車を1,3,6ヵ月齢で現場で超音波検査で評価した。
結果
超音波検査による測定は組織上での測定と強い相関があった。健康な馬とOC素因がある馬の大腿骨検体のあいだに、軟骨の厚みと骨化前面の凹みに違いはなかった。超音波検査で見えた軟骨内の血管構造は、組織やMRIで観察できた血管パターンに対応していた。
主な限界
研究に用いた検体数が少ないこと、選択した検体に初期の骨軟骨症病変がなかったが、現場での調査は進行中である。
結論
若馬における大腿骨滑車についての超音波検査では、軟骨の厚み、血管構造および骨化前面の凹みを正確に評価することができる。超音波検査は臨床症状のない骨軟骨症をスクリーニングしたり、臨床的に重要な箇所の病変をモニタリングや治療したりするのに使えそうで実現できそうなツールである。