育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

大腿骨内側顆の軟骨病変の跛行の原因としての評価11例(Schneiderら1997年)

調査で分かったこと

大腿骨内側顆は軟骨下骨嚢胞の好発部位ですが、軟骨のみの病変でも跛行の原因となることが明らかとなっています。

X線検査で異常が認められなかったものの、関節内麻酔で跛行が消失した症例に対して関節鏡手術を行いました。その結果、軟骨病変が認められ、もろく軟骨下骨にすぐ達する病変がみられました。軟骨病変をデブリードすることで、もとの運動に復帰できることがあることが明らかとなりました。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 大腿骨内側顆の軟骨病変が跛行の原因となっていた馬の臨床所見と治療に対する反応を評価すること。

 

デザイン

 回顧的症例集

 

サンプル

 膝関節の関節鏡にて大腿骨内側顆の軟骨病変が確認された馬11頭の医療記録

 

方法

 シグナルメント、経過、跛行検査、関節内麻酔への反応、膝関節のX線検査、診断的関節鏡の所見および治療を各馬の医療記録から抽出した。すべての馬で追跡調査と成績を得ることができた。

 

結果

 全ての馬は跛行しており、関節内麻酔で歩様が改善した。膝関節のX線検査では異常がみられなかった。診断的関節鏡は11頭の12関節で行った。軟骨は凹み、しわ、重なりがあり、関節鏡のプローブを押し当てると軟骨下骨に達した。局所的な病変だけでなく、4頭では内側顆の軟骨全体に損傷があった。大腿骨の局所的な病変に対してはデブリードを行った。2頭は軟骨全体に損傷がありデブリードしなかった。局所的な軟骨病変をデブリードした7頭のうち6頭は完全に復帰しもとの運動に復帰した。

 

臨床的示唆

 競技馬において、大腿骨内側顆の軟骨病変は跛行の原因になりうる。正確な診断を得るには関節鏡が必要である。局所的な軟骨病変をデブリードすることで、いくつかの症例はパフォーマンスへの復帰が可能となる。 

 

repository

軽種馬におけるレポジトリーのためのX線検査ガイド