育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

MRIで診断した温血種馬のP1矢状溝部の損傷(Goldら2017)

P1矢状溝部の損傷は、X線検査で検出することが難しく、MRIで特徴的な所見があることがわかっています。

equine-reports.work

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P1矢状溝部の損傷とその予後について、温血種の乗馬について追跡調査した結果。

ほとんどの馬で保存療法が選択されたが、跛行が持続してしまう馬が多かった。MRI所見は変わらず、追跡調査期間で矢状溝部の損傷像は消えなかった。

特に骨関節炎所見が併発していた症例は予後が悪く、跛行が消えず、元の運動に復帰できなかった。

 

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

要約

P1矢状溝部の損傷は、競技馬の跛行の重要な原因の一つである。この回顧的症例研究の目的は、温血種馬におけるMRI所見の特徴を記述すること。P1の矢状溝部の損傷をMRIで診断し、MRIによるフォローアップと臨床的な成績が明らかな症例を組み入れた。すべてのMRI画像は回収し、経験があり認定を受けた獣医師が読影した。19頭が組み入れ基準に合致した。P1矢状溝部には片側または両側でMRIにおける損傷がみられた。また、第三中手または中足骨の矢状稜に異常な石灰沈着が見られた。15頭(79%)の馬は、病変のある球節に骨関節炎の所見がみられた。18頭は保存療法が選択され、フォローアップのMRIではすべての馬で骨の異常が残っていた。13頭(68.5%)はフォローアップ期間終了までに跛行が持続してしたが、残りの6頭(31.5%)は歩様がよく、元の運動レベルに復帰した。本調査の所見から、成熟した温血種の馬において、P1矢状溝の急性または慢性損傷は低磁場MRIにおいてさまざまな特徴があることが示唆された。19症例から得られた所見から、P1矢状溝部の損傷と同時に骨関節炎と診断された馬が競技パフォーマンスできる予後は不良であることが示唆された。

馬のMRIについて詳しく知りたい方におススメ