育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

P1近位背側の局所的な放射性医薬品取り込み増加(Baileyら2007)

P1背側の骨代謝と疾患

P1近位背側は、球節の背側に位置しています。肢が着地してから球節が伸展する間に、P1背側には大きな負荷がかかります。これにより骨では活発な代謝が起こるほか、損傷が蓄積して修復が追い付かなかった場合には疲労骨折などの疾患が引き起こされます。

 

equine-reports.work

 

equine-reports.work

 

equine-reports.work

 

equine-reports.work

 

 

 

equine-reports.work

P1近位背側の疲労性疾患は、前面の盤状骨折や、矢状方向の不完全骨折などと関連していることが示唆されています。なかでも盤状骨折は両側に発生することが比較的多いことがわかっています。

 

equine-reports.work

運動している馬におけるP1背側への負荷や損傷の蓄積は、シンチグラフィ検査について行われた回顧的症例研究でも示されています。スポーツホースを主とする症例研究において、P1近位背側の放射性医薬品取り込み増加が示されましたが、これは跛行と有意に関連する所見ではなかったと示されています。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

本調査の目的は、P1骨幹端近位背側面の局所的な放射性医薬品取り込み増加の発生頻度、強度および対照性を明らかにすること。さらにこの所見が年齢、体高、性別、血統、体重および馬の用途に関連するか、そして跛行と関連するかを明らかにすることである。690頭のシンチグラフィ画像を主観的および客観的に解析した。すべての馬の年齢、血統、用途、体高、体重、性別、跛行および来院した理由を記録した。単変量および多変量解析を行い、局所的な放射性医薬品取り込みの増加と関連のある変数を解析した。局所的な放射性医薬品取り込み増加は前肢の17%、後肢の7%でみられた。この所見が最も多くみられたのは、前肢では年齢が高く、背が高く、体重の重い、温血種または温血種系の馬場馬術競技馬であった。後肢では年齢が高く、背が高く、体重の重い障害飛越または馬場馬術競技馬であった。たいていは両側に対称にみられる所見で、跛行とは関連していなかった。