育成馬臨床医のメモ帳

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中間膝蓋靭帯の損傷は他の膝関節の異常と同時に発生することが多い(Hoaglundら2019)

膝蓋骨に付着する靱帯は内側、中間、外側の膝蓋靱帯がある。なかでも中間膝蓋靱帯は膝蓋骨遠位から脛骨近位背側の脛骨粗面に終止する。

この靱帯の損傷はこれまでにあまり報告がないが、一般的には運動復帰の予後が悪いとされていた。今回は超音波検査で中間膝蓋靱帯に異常が検出された馬を対象に、臨床所見や検査所見、その後の長期成績を調査した。

中間膝蓋靱帯は、膝関節のその他の構造物と同時に損傷することが多く、単独ではほとんどみられないことがわかった。超音波検査では靱帯に低エコーがみられ、追跡調査を行っても、その低エコー所見に変化はなかった。長期成績は、運動復帰率92%で良好であった。中間膝蓋靱帯損傷は単独で発生するわけではなく、成績は他の損傷の影響があるため臨床的意義を定義することは難しい。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

中間膝蓋靭帯の損傷は比較的まれであるが、運動復帰の予後が悪いと報告されていた。馬において中間膝蓋靭帯の損傷の臨床所見、超音波所見、臨床的意義および運動復帰の成績はほとんど記述されていない。この回顧的調査の目的は中間膝蓋靭帯の損傷の臨床所見および超音波所見、膝関節のその他の損傷との関連および運動復帰の成績を記述することである。5年間で42頭の中間膝蓋靭帯の損傷を超音波検査で診断した。シグナルメント、臨床症状、画像診断所見、治療方法および成績に関するデータを記録した。中間膝蓋靭帯の損傷は、靭帯中央部に最も多く(35/42;83%)、病変は低エコーで境界明瞭な損傷(31/42;74%)、損傷の方向は頭外側から尾内側の斜め方向に起きていた(28/42;67%)。超音波検査の異常のみみられた中間膝蓋靭帯の損傷はほとんどなかった(1/42;2%)。13頭は超音波検査で再検査を行ったが、ほとんどは超音波検査では改善や悪化もなかった(11/13;85%)。にもかかわらず、長期追跡調査を行った25頭中23頭は運動復帰し(92%)、16頭は元通りもしくは高いレベルの運動に復帰した。治療は様々な方法が選択された。中間膝蓋靭帯の損傷の臨床的な意義を定義することは難しい。これは他の膝関節の異常と同時に見つかるからである。中間膝蓋靭帯の損傷は時間が経過しても超音波検査で改善がみられることはほとんどないが、運動復帰の予後は良好である。

 

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