育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

温血種における滑膜パッド内の骨軟骨片(Declercqら2008)

球節背側の滑液嚢

若い馬にみられる球節背側の滑膜パッド内の骨軟骨片は、偶発的な所見であることが多く、関節内の異常所見がみられないことがほとんどです。

一方で、高齢の馬で見られる滑膜パッド内の骨片は少ないものの、跛行と関連していて、関節内の疾患とも関連していました。

慢性的な関節炎の結果として形成される滑膜パッド内の骨片は跛行の原因となりうることがわかっています。慢性的な関節炎をコントロールするためには、さまざまな薬剤や血液製剤を用いた関節内投与が試みられています。しかし関節炎が改善しない場合には、この骨片を摘出するために関節鏡手術を行うことは有効な方法です。さらにそれと併用して、運動や調教内容を変更する必要があります。掌側の骨融解を伴う症例ではさらに予後がよくないとされています。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

要約

目的

 球節の滑膜パッド内の骨片に関する臨床所見および関節鏡所見を明らかにすること、その形状の特徴を明らかにすること。

 

研究デザイン

 回顧的研究

 

動物

 滑膜パッド内に骨片のある温血種馬104頭。

 

方法

 シグナルメントおよび術前の臨床検査およびX線検査所見を調査した。関節鏡による骨片摘出および軟骨と滑膜の評価を行った後、骨片の計測と組織学的評価を行った。

 

結果

 127の球節から142の滑膜パッド内骨片を摘出した。2頭の高齢馬は跛行していた。関節鏡手術において、関節内の異常は40関節(31.5%)にみられた。多変量回帰解析により、大きな骨片と関節鏡における異常所見には有意な相関がみられた(P=0.016)。骨片は骨軟骨で周囲を線維組織に完全に覆われていた。硝子軟骨の終端には線維構造が明らかで、細胞外基質はリアクティブパターンを表していた。

 

結論

 跛行はほとんどないが、関節鏡における異常所見と滑膜パッド内の大きな骨片には有意な相関があった。病理組織学的検査では、線維組織に埋まった骨軟骨片で、リアクティブパターンを示していた。関節の病態には十分に明言できるものはなかった。

 

repository

軽種馬におけるレポジトリーのためのX線検査ガイド