第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。
特に育成期にはよくみられる疾患で、調教が順調にできない主な原因のひとつとなっています。局所の冷却や運動強度を落とした調教に変更することで治療が可能です。一方で疲労骨折に至ると、跛行を呈することが多く、調教を継続することが困難になることがあります。
このような骨折の性質から、治癒を早めることを期待して、螺子固定術および骨穿刺術が検討されてきました。
螺子固定術に関する調査
螺子固定術を行った症例群の成績をまとめた調査では、80%以上が術前に出走しており、術後競走復帰した馬は83%でした。1走あたりの賞金やパフォーマンス指数は術前と同じが45%、上昇した馬が28%と良好な成績が得られました。
参考文献
研究を実施した理由
背側皮質骨の疲労骨折を治療する最良の方法とその効果については明確になっていない。本調査はサラブレット競走馬の症例に対して螺子固定が奏功するか調査するために行った。
仮説
螺子固定は背側皮質骨の疲労骨折に対する効果的な外科的手技で、術前のパフォーマンスレベルに復帰できる。
方法
1986-2008年の期間に、Equine Medical Centerに来院した116頭の競走馬(うち103頭がサラブレッド)の記録を調査した。医療記録から、症例の情報、患肢、骨折の形状、スクリューの長さ、併用した術式を記録した。競走成績はこれらの要素との関連を、Fisherの正確確率検定およびノンパラメトリック検定でP<0.05を有意水準として評価した。
結果
92頭のサラブレッドのうち、83%が術前に出走していた。83%は術後に出走し、63%は5回以上出走した。年齢、性別、患肢、骨折形状、併用した術式の有無と、術後の出走および5回以上出走する可能性との間に有意な関連はなかった。1走あたりの獲得賞金の平均と、パフォーマンス指数については、術前3走と比較して術後3走のほうが低かった。一方で、1走あたり獲得賞金とパフォーマンス指数が変わらなかった馬が45%、改善した馬が29%もいた。
結論と潜在的関連性
データからは、第三中手骨背側皮質骨の疲労骨折を発症した馬に対して、螺子固定することにより、競走能力を回復することは成功する。
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