第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。
特に育成期にはよくみられる疾患で、調教が順調にできない主な原因のひとつとなっています。局所の冷却や運動強度を落とした調教に変更することで治療が可能です。一方で疲労骨折に至ると、跛行を呈することが多く、調教を継続することが困難になることがあります。
このような骨折の性質から、治癒を早めることを期待して、螺子固定術および骨穿刺術が検討されてきました。
骨穿刺術に関する調査
骨折線を貫く、もしくは周囲の皮質骨に骨穿刺を行うことで骨の代謝を活発にさせ、治癒を促進する目的で骨穿刺術が行われていました。この方法は螺子固定よりも技術的に難しくない点および螺子よりも手術回数が少ないことがメリットとされています(*螺子固定は固定時と抜去時で2回手術が必要)。この調査において、11頭中9頭が平均9.4ヵ月で競走復帰しており、その後に再骨折は見られなかったと報告されています。
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参考文献
11頭の急性または慢性の左または右の第三中手骨皮質骨不完全骨折の症例が、外科的な骨穿刺を受けた。骨折は身体検査およびX線検査によって診断した。骨折部位には2.7または3.5mmのドリル孔を4-8ヵ所あけた。骨折は3か月以内に治癒し、ドリル孔は7カ月以内に見えなくなった。9頭(88%)は競走復帰し、2頭は引退、うち1頭は手術の合併症によるものであった。手術から競走復帰までの期間は平均9.4ヵ月であった。手術から24カ月以内に再骨折はみられなかった。骨穿刺術は技術的に難しくなく、インプラントのように2回も手術が必要ない。
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