第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。
特に育成期にはよくみられる疾患で、調教が順調にできない主な原因のひとつとなっています。局所の冷却や運動強度を落とした調教に変更することで治療が可能です。一方で疲労骨折に至ると、跛行を呈することが多く、調教を継続することが困難になることがあります。
このような骨折の性質から、治癒を早めることを期待して、螺子固定術および骨穿刺術が検討されてきました。
骨穿刺術に関する調査
骨折線を貫く、もしくは周囲の皮質骨に骨穿刺を行うことで骨の代謝を活発にさせ、治癒を促進する目的で骨穿刺術が行われていました。この方法は螺子固定よりも技術的に難しくない点および螺子よりも手術回数が少ないことがメリットとされています(*螺子固定は固定時と抜去時で2回手術が必要)。また、この調査では症例の半数を立位で手術しており、倒馬と覚醒のリスクが軽減できることもメリットとなります。骨折治癒の成績も良好で、調教復帰まで平均4.25ヵ月、競走復帰まで平均6.9ヵ月と報告されています。
参考文献
要約
28頭の馬における31の中手骨背側の疲労骨折に対して片側皮質の骨穿刺術を行った成績を回顧した。この骨折の発生は、第三中手骨の中位1/3の背外側面に多く、左前肢および牡馬に多かった。ほぼ半数の馬では立位で手術を行った。手術から調教復帰までの期間は平均4.25ヵ月、出走までの期間は平均6.9ヵ月であった。手術時の体位と出走までの期間に相関はなかった。合併症は抜糸できなかったことと1頭で漿液腫があった。
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