第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。
特に育成期にはよくみられる疾患で、調教が順調にできない主な原因のひとつとなっています。局所の冷却や運動強度を落とした調教に変更することで治療が可能です。一方で疲労骨折に至ると、跛行を呈することが多く、調教を継続することが困難になることがあります。
このような骨折の性質から、治癒を早めることを期待して、螺子固定術および骨穿刺術が検討されてきました。
第三中手骨の重篤な骨折に関する調査
第三中手骨の骨幹端完全骨折を発症した症例の骨を回顧的に調査した報告があります。これによると、完全骨折をおこした部位には疲労骨折を示唆する骨膜表面の褪色と仮骨形成があることがわかりました。さらに、完全骨折を発症していない対側の前肢にも骨折部と同様に肉眼およびX線検査における異常が認められました。このことから、中手骨疲労骨折などの骨損傷がある競走馬では、完全骨折のような重篤な骨折に至る可能性があることが示唆されました。
参考文献
要約
サラブレッド競走馬における第三中手骨骨幹端の完全骨折の特徴所見を明らかにした。第三中手骨には疲労骨折がおこることが知られているが、さらなる目的として、先行する不完全疲労骨折の兆候と完全骨折が関連するか明らかにすることであった。片側の中手骨骨幹端の完全骨折により安楽死となった12頭のサラブレッド競走馬から両側の中手骨を得て、肉眼およびX線検査で評価した。骨幹端の中央または顆上領域において、開放で粉砕した横もしくは短斜骨折が発生していた。骨折した骨では、骨折線から外骨膜の表面の退色と仮骨形成がみられた。すべての対側肢の中手骨には肉眼で解剖学的な病変があり、骨折部と同様のX線画像での異常像がみられた。両側の中手骨に先行する骨損傷がある競走馬において、致命的な骨折が発生していた。
|