育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑤不整脈 心室期外収縮

プアパフォーマンス

馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があります。

 

まずは慎重な症状の聞き取りと身体検査が重要となります。ここで示す症状が呼吸器症状か、循環器症状か、歩様異常か、消化器症状かを大別します。そこからさらに詳しく分類し、それぞれ診断するための検査に進みます。

 

 

 

循環器疾患の場合

不整脈のなかには、競走馬のパフォーマンスに影響するものがあります。

心室期外収縮は、臨床症状のない馬でも聴診されることがあります。これは運動時に消失することが多いのですが、なかには運動時にも持続するまたは頻度が増加する症例や心室頻脈に繋がることもあり、突然の虚脱や突然死に繋がる可能性があります。

したがって、安静時の心電図検査だけでなく、運動時の心電図検査により心室期外収縮が消失するものかどうか確認する必要があります。

 

 

 

参考文献

症状

期外収縮は安静時の聴診で検出されることが多く、これが心室性または上室性のどちらを起源とするかを明らかにするために心電図検査が必要となる。心室性期外収縮のうち、運動中には消失するものや、運動後にのみ検出されるものはパフォーマンスに影響する可能性は低い。一方で、最大運動時に心室期外収縮が持続または増加する場合、急激な運動不耐性を起こすことがある。このことは馬にとっても騎乗者にとっても安全上問題となり、心室頻脈や心室細動といった、より悪い不整脈が起きる可能性があり、それにより虚脱や突然死に至る可能性がある。

 

診断

安静時に見られた心室期外収縮が、運動時に消失するか持続するかは運動時心電図検査で確認しなければならない。加えて、上気道の検査もすべきであり、運動中の上気道閉塞性疾患があると、不整脈発症リスクが増加するためである。