育成馬臨床医のメモ帳

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馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑩筋肉 総論

プアパフォーマンス

馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があります。

 

まずは慎重な症状の聞き取りと身体検査が重要となります。ここで示す症状が呼吸器症状か、循環器症状か、歩様異常か、消化器症状かを大別します。そこからさらに詳しく分類し、それぞれ診断するための検査に進みます。

 

 

 

骨格筋が原因の場合

骨格筋を原因とするプアパフォーマンスの代表的なものの一つに、横紋筋融解症があります。骨格筋が壊れてしまう疾患で、散発性で飼料や運動に原因がある場合が多く、日本では”すくみ”と呼ばれています。

同じような症状を引き起こす疾患のなかには、鑑別が必要な遺伝的疾患が隠れています。特に糖代謝の異常を原因とする横紋筋融解症を呈す多糖類蓄積性ミオパチー(PSSM)や、ビタミンE依存性ミオパチーなどは、運動後の歩様異常や通常の血液検査で得られる筋肉系の異常は先に挙げた労作性横紋筋融解症と一致します。飼料や運動計画を変更するだけでは対処できない、繰り返し発症する横紋筋融解症では、特殊な血液検査や遺伝子検査も検討すべきかもしれません。

 

PSSMについて詳しくはこちらをご覧ください。

ker.com

 
参考文献