膝関節を原因とする跛行のうち、膝蓋靱帯の損傷は多くありません。靱帯損傷の多くは外傷と関連していて、ほとんどで靱帯付着部の骨折を伴うことが報告されています。
膝蓋靱帯は正常な馬でも超音波検査画像は独特な見え方をしますが、重度の跛行を伴う靱帯損傷の症例では超音波検査でも明らかな靱帯損傷が検出できます。
参考文献
調査を行った理由
馬の膝関節を原因とする跛行において、超音波検査は広く使われている。しかし、外側膝蓋靭帯の正常および損傷の所見に関する情報は限られている。
目的
正常な外側膝蓋靭帯の超音波検査所見を示すこと。外側膝蓋靭帯の損傷について、超音波および臨床所見を記述すること。
研究デザイン
健康な馬と症例に関する回顧的記述的調査
方法
膝関節による跛行のない12頭について、両側の外側膝蓋靭帯を超音波で観察し、特徴を記録した。1999-2011年の期間で、外側膝蓋靭帯の損傷は18頭でみられた。
結果
正常な外側膝蓋靭帯は、起始から終止まで見た目が変化する。膝蓋骨の付着部からは辺縁がはっきりせず、外側滑車稜の上では平坦化し二つに分かれる。外側滑車稜を過ぎた領域では断面は円形から三角形になり、エコー輝度や線維配列も均一でなくなる。さらに、脛骨に終止する部位では線条となる。外側膝蓋靭帯の損傷は複数の品種や用途の馬でみられた。すべての損傷は急性におき、12頭は外傷があった。11頭は重度の跛行(G4-5/5)であった。78%の症例で、超音波検査にて重度の病変がみられた。靭帯の中央部から終止部にかけての損傷が最も多かった。X線検査では脛骨粗面6頭、膝蓋骨4頭、外側滑車稜1頭に骨折が見られた。9頭で外側膝蓋靭帯の付着部における骨折が見られた。5頭は骨髄炎、1頭は化膿性滑膜炎に対して治療を行った。4頭で再検査を行ったところ、靭帯損傷の所見にほとんどもしくはまったく変化はなかった。9頭は騎乗運動に復帰し、1頭が繁殖牝馬となった。2頭は引退して1頭が繁殖牝馬となった。2頭は追跡できず、3頭は合併した損傷により安楽死となった。
結論
超音波検査において、外側膝蓋靭帯の形状、エコー輝度および線維配列のバリエーションを知ることは偽陽性の診断をしないために重要である。外側膝蓋靭帯の損傷はたいてい重度で、膝蓋頭外側の外傷と関連していた。他の重度損傷がない場合には、外側膝蓋靭帯の損傷の予後は良好から注意が必要である。