馬の運動誘発性肺出血は、競走馬においてまれに発生する疾患で、パフォーマンス減退の原因となります。
日本の競走馬におけるEIPHの発生
2001年にJAVMAに掲載された報告では、日本の競走馬におけるEIPHによる鼻出血の発生率は0.15%とされています。発生に関わる因子はレースタイプ、年齢、距離および性別で、平地より障害で多く、2歳より古馬で多く、1600−2000mより1600m以下で多く、オスよりメスで多いことが報告されています。
2023年にAnimalsに掲載されたレポートでは、日本の平地競走馬における鼻出血によるEIPHの発生は1000回出走あたり1.30症例(0.13%)でした。ここでは気温もリスク因子として解析され、気温が低い方が発生しやすいことが明らかとなりました。また、体重が増えるほど発症しやすく、競馬場による差もあることが明らかとなりました。
国外では
北米の獣医大学の内科学の著名な先生が作成した運動誘発性肺出血EIPHについての合意声明がJVIMに掲載されています。これはOpen Accessで誰でも読むことができます。
要約
背景
運動誘発性肺出血についての公開されている研究を個別に評価すると、その結果はしばしば曖昧なものや矛盾するものがある。それぞれの研究から根拠をシステマチックにレビューし、その質を全体的に評価し、推奨事項について知らせる。
目的
EIPHが健康や福祉に負の影響を与えるか、馬の運動能力に影響を与えるか、EIPHに予防的な介入は有効か、フロセミドが馬の運動能力に影響するかを明らかにするため、証拠を調査すること。
動物
なし
材料と方法
システマティックレビュー。7名の専門家をパネリストとして、先にあげた4項目の目的について言及する査読済みの文献を調査した。GRADEと呼ばれる方法に従った。パネリストのワーキンググループにより、公開された情報の質が評価され、所見の要点を表にまとめた。 推奨事項は根拠となる文献の質に基づき、パネリストによる投票で決定した。
結果
多くは根拠として質が低い〜非常に低いであった。実験的な研究の多くは統計学的パワーが不足していた。EIPHが進行性の病態で、肺の病変と関連していること、競走パフォーマンスに負の影響があること、重度のEIPH(グレード4)は競走寿命が短くなること、フロセミドはEIPHの発生率や重症度を下げることにも効果があること、フロセミドの投与を投与することと優れた競走パフォーマンスが関連することは、中程度〜高い質の根拠があった。
結論と臨床的関連性
EIPHは疾患と考えることが強く推奨され、競走馬の管理においてフロセミドの使用をそこまで推奨しない。